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2017年4月19日のマーケット・コメント

仏大統領選挙と北朝鮮リスクが消えるタイミングと各市場の戻りめど

 

現在、目先の政治・軍事関連リスクとして、世界中が仏大統領選挙と北朝鮮動向に注目しています。それぞれについて「何がどうなったら市場はリスクの織り込みを解消するのか」をご説明します。

 

まず、仏大統領選挙です。4月23日に第1回投票が行われ、過半数を得票する候補者がいなかった場合、5月7日に投票1位と2位の2名による決選投票が行なわれる予定です。有力候補者は4名いて、マクロン氏(中道派、先週末調査での支持率24%)、ルペン氏(極右派、23%)、フィヨン氏(中道派、18.5%)、メランション氏(極左派、18%)です。支持率を見ると、第1回投票で過半数を採れる候補者はいないと思われます。しかし中道派が決選投票に一人でも残れば、第1回投票の結果が出た段階で、市場のリスク織り込みは終了するでしょう。決選投票が「極右派(あるいは極左派)と中道派」となった場合、極左派(あるいは極右派)に第1回で投票した人が、決選投票で極右派(あるいは極左派)に投票するとは考えられないからです。

 

したがって、仏大統領選挙の最大のリスク・シナリオは、決選投票が「極右派と極左派」になった場合です。市場は、5月7日の決選投票の結果を見て、更に右か左に極端に傾斜する新大統領がどのような政策を実際に打ち出してくるのか、を見極めるまでリスクを織り込み続けることになるでしょう。

 

次に北朝鮮です。朝鮮人民郡創設記念日(今年は85周年)である4月25日に向けて、米軍はカール・ビンソン空母打撃群を派遣する、と伝えられています。場合によればロナルド・レーガン(現在横須賀港で整備中)、ミニッツ(現在太平洋上)という2隻の空母を加え合計3隻の空母を派遣する、とも伝えられています。空母3隻集結は、攻撃準備の「本気度」の高さを表しています。経済政策でなかなか結果が出せないトランプ政権としては、北朝鮮が攻撃の大義名分を与えてくれれば、本気で北朝鮮攻撃を行ない、成果を出したいと考えているでしょう。

 

しかし、4月11日付のコメントでもご説明したとおり、金正恩にとってもっとも大切なことは「現政権体制の維持」です。金正男暗殺も現体制が維持できなくなるリスクの排除が理由です。北朝鮮がもし「一線(Red Line)」を超えてしまったら、米国に大義名分→北朝鮮攻撃→現体制崩壊、となることは、北朝鮮にとっても明らかなことで、北朝鮮は米国に攻撃の大義名分を与えることは考えられない、という結論になります。

 

4月25日に北朝鮮が大義名分を与えてくれなかった場合、1.カール・ビンソンは中国が北朝鮮に核放棄を働きかけるためのプレッシャーとしてしばらく留まるものの、ミニッツは韓国沖には向かわない。2.横須賀で整備中のロナルド・レーガンは予定通り整備を続け、出港しない。3.カール・ビンソンも北朝鮮周辺海域から離れる。と、段階を経て米軍は北朝鮮攻撃準備を解いて行くでしょう。市場のリスク織り込みは4月25日までで、その後の注目点は北朝鮮から、企業業績発表や米国経済指標など通常の項目に移行して行くと考えられます。

 

両者リスクの払拭による各市場の戻りめどは4月11日コメントでの、3月半ば以降の下げの3分の2戻しである米国10年国債利回り2.5%程度、ドル円113円程度、日経平均19,200円程度を維持しますが、戻りが弱い場合でも下げの半値戻りの、米国10年国債2.4%程度、ドル円112円程度、日経平均19,000円程度(いずれも、ちょうど3月末の水準)までの戻りは想定されます。