ドル円のレンジは下方シフトした可能性大-しかし下抜けはなさそう
ドル円は、先週110円でサポートされた後、一時112円台回復し、元の112-115円のレンジに戻るかと思われましたが、先週金曜日の後場の日本株急落に引っ張られて111円台に下落、さらに米国長期金利低下を受けて本日は110円台まで下落となっています。3月27日のコメントで、
「110円水準でサポートされた場合の目先の高値めどですが、直近の112-115円のボックスが2円下方シフトして110-113円の可能性と、ボックスは元の112-115円のままだが一時的に下にオーバーシュートした可能性の両睨み」
「111円台後半への戻りが鈍い場合は前者、戻りが早い場合は後者の可能性が高まります」
とご説明しました。直近の動きは、ボックスが110-113円に下方シフトした可能性が高いことを示唆します。
米ドルの上値が重くなりドル円のレンジが下方シフトした理由は、言うまでもなくトランプ政権の政策運営能力に対する疑念の高まりです。しかし、オバマケア代替法案は、今月中に修正され採決に向かうと思われ、また税制改革法案も5月とされている予算教書発表までには、少なくとも大枠は具体化すると思われますので、短期的には一気に株安、円高進行する可能性は低いと思います。
また、長期金利水準からも、110円を大きく下回る円高進行の可能性は低いと言えます。昨日時点で、米国10年国債利回りは2.33%で、2月24日に付けた今年最低水準の2.31%とほぼ同水準まで低下しました。長期金利は「期待インフレ率+実質金利」ですが、物価連動債から算出される期待インフレ率は、今年はほぼ2.0%で安定推移しています(昨日時点では1.97%)。0.36%という実質金利水準は世界最低水準(日本の場合は0.6%程度、ドイツの場合は1.3%程度)であり、期待インフレ率の低下がない限り、米国長期金利の更なる低下は考えにくいです。米国経済は好調持続、原油価格高止まりの中で、期待インフレ率が低下するとは思えず、米国長期金利の更なる低下余地は極めて限定的だと結論付けられます。
為替レートが連動する要因は2国間の、通貨供給量増減の差、金利差変化、貿易収支差、経常収支差など、時期によって変わります。直近1年以上にわたってドル円レートの決定要因となっているのが、日米長期金利差変化です。この相関が変わらない限り、米国長期金利の更なる低下がなければ、更なる円高ドル安進行はない、ということです。
ただ一つ、一時的にせよ110円を大きく下回る円高ドル安進行があるとすれば、米国株大幅下落を受けた、いわゆる「リスクオフ」です。先週末に発表された3月28日のシカゴ投機筋ポジションは53,181枚と、円高ドル安進行の中、3月21日の66,987枚から減少したものの、依然として評価損を抱えたポジションが少なからず存在する状態で、リスクオフの動きになり「投げエネルギー放出」となり得る状況であることには留意が必要でしょう。