トランプ政権への市場の期待が失望に変わると思うにはまだ早い
昨日、トランプ大統領がコミーFBI長官を罷免した背景に、フリン前大統領補佐官への操作中止の圧力に屈しなかったことがあるとの疑いから、米国市場はリスク・オフとなり、米国株と米ドルは大幅下落、債券は大幅上昇(大幅金利低下)となりました。米国株の下落を牽引したのは、金利低下の悪影響を受ける金融株と、直近の株価上昇が大きかったテクノロジー株で、ディフェンシブ株は堅調な動きでした。これは、下落の背景が資産配分の変更(米国株全体の削減)ではなく、ファンド・マネージャーの銘柄入れ替えとヘッジファンドの売りだったことを意味します。
トランプ大統領弾劾との見方も出てきていますが、以前のウォーターゲート事件のときと同様、FBIの捜査には少なくとも数ヶ月はかかります。いまはまだ「もしかしたら・・・かもしれない」という疑念の段階であり、市場がそれを悪材料として動くには早すぎます。今後、事態が「おそらく・・・だろう」「間違いなく・・・だ」と変化して行く過程で、市場はそれを悪材料として織り込んで行くでしょう。
しかしながら、トランプ大統領は当面この問題の火消しに集中せざるを得ず、経済政策の具体化、実行は一層遠のいたことは確実です。ただ、期待インフレ率を表すBEI率は、昨日時点で1.81%と大統領選挙日の水準まで低下しており、これ以上の低下余地は極めて少ない状態です。すなわち米国10年国債利回りの低下余地も限られ、円高ドル安進行の余地も限られる、と思われます。
結論としては、5月12日付コメントでご説明したように、当面ボックス相場が継続する、という見方を維持します。米国10年債利回りの更なる大幅低下がないとすると、ドル円の安値めどは110円程度、そうであれば日経平均の安値めどは19,000円という展開が想定されます。(5月12日付コメントの2.)4月の時と同様に、ドル円はゆっくり買い下がり始めていい水準だと思います。