日経新聞紙面記載のPERの謎(3)-大きな問題発見
間接的に(回答を聞いた人から又聞きで)、日経新聞社から回答を聞きました。ご存知のように、「日経平均株価」は、採用225社の株価をみなし額面が50円になるように調整し、その合計値を現在の序数である26.301で割って算出されています。結果として、時価総額とは相関のない、「みなし額面50円の株価」で指数におけるウェイトが決まります。ウェイト上位銘柄を上げると、1位がみなし額面50円の株価が36,940円のファスト・リテイリング(9983)の7.1%、2位がみなし額面50円の株価が26,799円(株価×3の調整)のソフトバンク(9984)の5.2%、3位がみなし額面50円の株価が21,785円のファナック(6954)の4.2%となっています。EPSの計算も当然同じ計算方法のはずだと思い、5月17日付コメントに添付した私が行なった日経平均予想EPSの計算も、株価を会社予想EPSに置き換えて同様の計算を行なったものです。
ところが、です。日経新聞に掲載されているPERは「採用225銘柄の時価総額合計」÷「採用225銘柄の当期利益額の合計」で計算されていることがわかりました。つまり、日経平均株価は調整株価の単純平均であるのに対し、PERはTOPIXと同様に時価総額加重平均だということです。まったく整合性が取れず、日経新聞記載のPERは意味を成さないことになります。
225銘柄の時価総額上位銘柄とそのウェイトは、1位トヨタ(7203)5.6%、2位NTT(9432)3.2%、3位NTTドコモ(9437)3.1%、4位三菱UFJ(8306)2.8%、5位ソフトバンク(9984)2.8%、となります。日経平均株価のウェイトとはまったく異なるウェイトになり、また、上位には低PER銘柄が並び、本来のウェイトが高いファスト・リテイリング(9983)やファナック(6954)などの高PER銘柄のウェイトは激減します。
意図があるのかどうかは不明ですが、結果として日経平均株価の予想PERは不当に低く表示されています。もともと金額加重平均指数であるTOPIXを見ると、本日の日経新聞には、予想ベースPER15.41倍、実績ベースPER16.65倍と掲載されています。昨日の引け値は1,570.21でしたので、2016年度実績EPS94.3、2017年度予想EPS101.9で8%増益予想ということになります。一方、同じ紙面上で日経平均の予想ベースPERは14.05倍と掲載されています。
結論として、日経新聞掲載のPERは、TOPIXについては正しい数値だが、日経平均については不当に低い数値だ、ということがいえます。不当に低く算出されたPERに基づいて算出される「日経平均今期予想EPS1,400円」が、証券業界のあちこちで一人歩きしている状況は問題です。
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