6月FOMC-イエレン議長は今後バランスシート縮小開始優先を示唆
6月14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、事前予想通り0.25%の利上げが決定され、FFレートの誘導目標は1-1.25%に引き上げられました。また、FOMC関係者が予測する2017年後半と2018年の利上げ回数はそれぞれ1回と3回で、前回3月会合での見通しが維持されました。同日朝に発表された消費者物価指数(CPI)は、食料品とエネルギーを除くコアCPIで1.7%と予想を下回りましたが、イエレン議長はFOMC声明文発表後の記者会見で、「最近のインフレ指標低下は一時的な要因による」とし、強気な姿勢を崩しませんでした。
今回のFOMC声明文で重要なのは、FRBのバランスシート縮小の詳細が示されたことです。それは保有債券の満期償還分の一部または全部を、再投資しないことで行なわれます。バランスシートの規模は3度にわたる量的金融緩和(QE)により、QE開始以前の1兆ドルにも満たない水準から約4.5兆ドルに拡大しており、その規模縮小は利上げによる金利水準の引き上げとともに、金融政策正常化への両輪の一つです。
今回発表された内容は、当初の月間の縮小最大額は100億ドルで、500億ドルに達するまで3ヶ月ごとに100億ドル増額する、というものです。すなわち、最初の1年間は最大3,000億ドルで2年目以降は年間最大6,000億ドルの縮小となります。FRB保有債券の償還予定額は2017年が約1,900億ドル、2018年が3,700億ドル、2019年が約3,300億ドルなので、縮小開始1年経過後は償還分の再投資は一切行なわれなくなる見込みです。債券市場の需給悪化要因ですが、声明発表を受けても米国債券市場は安定推移しています。
縮小開始時期については、市場では12月を予想する向きが多数派です。たしかに声明文では従前どおり「年内開始」とされましたが、イエレン議長は声明発表後の記者会見で「比較的早期の実行もありえる」と、9月開始もありえることを示唆しました。この発言は、イエレン議長が9月の利上げよりも9月の縮小開始を優先して考えている、と伺えます。
バーナンキ前議長は任期直前の2013年12月に、債券買い入れ額の縮小を決断し、金融政策正常化への第一歩を踏み出しました。イエレン議長は2018年2月に任期を迎えます。バーナンキ前議長と同様にイエレン議長は任期前に、まだ動いていない金融政策正常化への両輪の一つであるバランスシート縮小に、是が非でも着手したいのではないでしょうか。
将来必要になった時の利下げののり代を確保するために、出来る時に着々と利上げし、さらに債券市場が安定推移しているうちに粛々とバランスシート縮小を行なうFRBの方針は、出口戦略としては完璧に見えます。任期が見えてきたという点では共通していますが、出口はまったく見えない中、その存在すら怪しい出口戦略に関わる議論を強いられている我が国の中央銀行総裁の状況と対比すると、一層完璧さが際立ちます。