ドル円はトレーディング・セル
先週末の米国債券市場で、米国10年国債利回りは2.33%まで上昇し、ドル円も112円台後半に入ってきました。しかし、以下の2点からドル円が113円を明確に超えて行く可能性は限られ、現状水準からはドル円はトレーディング・セル(ドル・ショート)の姿勢で臨むべきだと考えます。
まず長期金利の水準です。2.33%の米国10年国債利回りを分解すると、10年物価連動債利回り0.59%、ブレーク・イーブン・インフレ(BEI)率1.74%となっています。つまり、直近の米国10年国債利回り上昇は、その大部分が10年物価連動債利回りの上昇の寄与です。10年物価連動債利回りは3月半ばの年初来最高水準に迫っており、更なる上昇余地は限られます。一方、期待インフレ率を表すBEI率は、米国で主要経済指標の内容が強いものが続くか、原油価格など商品価格が大幅上昇するかがない限り、低迷が続く可能性が高いでしょう。すなわち、米国10年国債利回りの更なる上昇余地は限られ、更なる円安ドル高進行の余地は限られるといえます。
もう一つは短期筋のポジション状況です。週末に発表された6月27日時点のシカゴ筋ポジションは、差し引き61,350枚の円ショートと、前週の49,959枚から大幅増加しています。しかも内訳を見ると、円ロングが39,498枚から38,254枚へ減少、円ショートが89,457枚から99,604枚へ増加です。まだトランプ政策実現へ期待感があった年初を除くと、今年はおおむね10万枚が円ショートの最高水準であり(3月半ばと5月半ば)、円ショートの増加余地は限られるでしょう。目先、何らかのきっかけで円高ドル安方向へポジション調整が進みやすい状況だと言えます。
しかしながら、米国株の大幅下落がない限り、大幅な長期金利低下とそれによる大幅な円高ドル安進行も想定できないため、買い戻しの目処は111円割れ程度とすべきだと思います。