7月FOMC議事録
昨日、7月20日FOMC議事録が公開されました。いうまでもなく注目点は、1.9月20日FOMCでバランスシート縮小開始が決定されるか、2.年内(おそらく12月13日FOMC)に追加利上げはあるのか、の2点です。
このうち、1.に関しては、声明文からの追加情報はなく、バランスシート縮小開始は比較的早期(relatively soon)に行なうべきだ、とされており、よほど想定外の事態が発生しない限り、9月20日FOMCでバランスシート縮小開始が決定されると考えてよいでしょう。これは市場コンセンサス通りでした。
今回市場の変動要因となったのは、2.に関してでした。追加利上げの根拠となる今後のインフレ見通しに関して、「多数の参加者は、インフレ率は以前予想したより長い期間2%を下回る可能性があり、インフレ見通しのリスクは下方に偏っている。」「多くの参加者は、フィリップスカーブ(失業率とインフレ率の関係。失業率の低下がインフレ押し上げ要因となるという理論。)は有用なツールであるかどうかについて議論している。」とされました。追加利上げに関しては、「数名は追加利上げについて辛抱強くあれる。」「それ以外の数名は、利上げの遅れに対するリスクを警戒すべきだ。」と、意見が割れたことが示されました。
それを受けて、市場では「FOMCで、インフレ見通しの下方修正を示唆」と捉えられ、米国10年国債利回りは2.27%から2.23%へ低下、ドル下落、という反応になりました。ドル円も東京時間で110円割れまで下落しています。
しかし、今回の議事録を受けて、ドルに対して更に弱気になる必要はない、と考えます。そもそも市場コンセンサスは「バランスシート縮小開始は9月の可能性大、12月の追加利上げは今後の経済データ次第。」だったはずです。FOMCも利上げ時期に関しては、一貫して「あらかじめ決まっているものではなく、今後の経済データ次第」としてきており、整合的です。
また、今回の議事録で注目に値するのが、「ある参加者」の意見としての記述です。通常、一人の参加者の意見が記述されることはなく、今回の「ある参加者」はイエレン議長だと推察されます。その意見は「追加的利上げが、金融当局の政策目標の適切なバランスを取ることになる」というものでした。これは「特段の支障がない限り、12月に追加利上げを行ないたい」と解釈され、その背景は「利上げはインフレ制御という目的だけではなく、将来の利下げ余地を作っておくという目的もある」ということだと思われます。
今後も米国経済統計に一喜一憂する状態がしばらく続くと思われますが、バランスシート縮小開始は、着実な金利上昇ドル高要因であることもあり、ドル安トレンド終了から緩やかな上昇へ、ドル円は目先112円程度を目指す動きになる、という見方を維持します。もちろん米国株主導の世界株式本格調整が始まったら、この見方は変更する必要があり、その場合株安に引っ張られる円高進行がどの程度か見極める、ということになります。