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2017年9月26日のマーケット・コメント

「消費増税使途見直し」は実質的にはヘリマネ

 

予想通り、昨日安倍首相は28日の国会解散を表明しました。解散の大義は「8%から10%への消費増税による税収の一部を、教育無償化を柱とする『人づくり革命』に振り向けることの是非」とされました。本来の使途は国債発行残高増加の抑制でしたので、財政再建化とは逆の方向です。安倍首相も「2020年のプライマリーバランス均衡化は困難となる」と発言し、財政再建は後回しになることを認めています。

 

ご存知の通り、日本の財政収支は大幅な赤字で、歳入の半分以上を国債発行で賄っています。国債発行残高は毎年約40兆円のペースで増加しています。本来であれば、消費増税を財源とする5兆円の税収増は、毎年の増加ペースを40兆円から35兆円に減らすために使われるはずでした。

 

今回の安倍首相の方針は、消費増税による税収増加分の一部を教育無償化などに振り向ける、ということですので、財源がきちんとあるように聞こえます。しかしお金に色はないので、国債(国の借金)増加ペースを当初予定通りに減速させずに、新たな財政政策を打ち出すということは、実質的にはその財源は国債発行です。その国債は実質的には日銀が買い入れます。つまり、日銀によるファイナンスを財源とする財政政策、いわゆるヘリマネ(ヘリコプター・マネー)そのものです。

 

いつまで市場は「日本は大幅な財政赤字だが、毎年大量の国債を発行して賄っており、国債の実質的な買い手は中央銀行である」という状態に寛容なのかわかりませんが、確実なことは「将来世代の負担を軽減する」という大義の元に、2012年に当時の野田首相と谷垣総裁が5%の消費税率を8%、そして10%に引き上げる決断をしたにもかかわらず、その後の安倍首相は財政弛緩方向にひた走り、「将来世代の負担は増大が続く」ということです。