ビットコインに近寄るのは危険
ビットコインが乱高下しながら大幅に下落しています。昨年12月18日の高値が19,511ドル、昨日の安値が9,186ドルでしたので、わずか1ヶ月足らずの間に半値以下になったことになります。11月30日終値は9,654ドルで、それが3週間足らずで2倍になった記憶から、ここまで下げれば少し買ってもいいのでは、と考える方がいても不思議はありません。しかし、ビットコインは本質的には誰もその価値を保障しているものではない上に、ある程度以上の影響力が出てくると国が規制により潰しにかかるタイプの物です。
ビットコインが長期にわたって定着することはない危険なものだ、と私が考える理由は以下の通りです。ビットコインとは「ビットコイン」という名称の仮想通貨だけでなく、「すべての仮想通貨」を指します。
1.通貨としての使用実績がほとんどなく、もっぱらキャピタルゲイン狙いの投機対象に過ぎない。
ビットコイン強気派は、「まだ広く認知が進んでいないため今は使用実績が少ないが、その利便性が認知されれば価値は大幅上昇する」と主張しています。使用実績が徐々に増加しているのなら、私がその利便性を理解できていない可能性もあります。しかし、本当に通貨としての利便性が高いのなら、たとえ今は一部に限られた状況だとしても、もう少し使用実績があってもいいはずです。これがビットコインが長期にわたって定着しないと考える、最大の理由です。
2.主要国にとってビットコインの横行は都合の悪いことであり、国は都合の悪さが解消されるまで規制をかけてくる。
以前はビットコイン市場参加者(取引シェア)の圧倒的最大国は中国でした。しかし、中国政府はビットコインが資本流出規制の抜け穴になっていることに気づき、昨年、ビットコイン取引を全面的に禁止しました。現在の売買シェアは、日本が40%、米国が30%、韓国が20%となっています。今年のビットコイン下落のきっかけの一つが、韓国政府による規制強化の噂です。その可能性は十分あるでしょう。
本日の日経新聞3面の記事を見て、驚いて日本のビットコイン業者のレバレッジを調べたところ、最大手のビットフライヤーが15倍、他の数社は25倍でした。ボラティリティ水準がまったく異なるにもかかわらず、F/Xと同水準なのです。例えばドル円の30日ヒストリカル・ボラティリティ(HV)は本日時点で6.4%、ビットコインは129%です。なんと、ビットコインのHVはドル円の20倍です。ビットコインで25倍のレバレッジは、ドル円で言うと500倍!のレバレッジに相当するということです。金融庁は、F/Xのレバレッジを25倍から10倍にすべき、などという議論よりも、この問題点に気づけば、投資家保護という大義名分の元にビットコインのレバレッジ取引禁止措置を取るでしょう。
マネーロンダリングの温床となる、裏社会の取引資金となる、など国にとって都合が悪いことは他にも多数あります。
3.ビットコインはその価値を誰も保障していない。価値を担保するものもない。
各通貨は、金兌換制度の時代は金がその価値の担保でしたが、現在はそれぞれの中央銀行が価値を保障しています。それゆえ1万円札は原価何十円のただの紙ですが、1万円の価値を疑う人はいないのです。本質的には、ビットコインは金と似ています。金も使用実績は一部に限られ、何のイールド(利払いや配当)も生まない物です。しかし、金はその価値を過去何千年にもわたって、人々が信じてきた歴史があります。人々が価値があると思う状況が、ビットコインの場合たかが数年の歴史しかなく、しかも歴史を重んじる欧州ではその存在すら認めない姿勢です。(日本の場合、取引業者を登録制にしてしまった時点で存在は認めてしまいました。米国はまだ明確なスタンスを示しておらず、とりあえず様子見姿勢です。)金とは違い、ビットコインは一時的なブームに沸き価格高騰した商品のように、今考えればどうかしていたな、となる運命ではないでしょうか?
ブロックチェーンという技術を否定するつもりはなく、今後色々と応用されていくのでしょう。しかしビットコインは「通貨」ではない、と考えます。もちろん、ビットコインが通貨であろうとなかろうと、取引で利益を得たものが勝者だ、という考えを否定するつもりはありません。ただ、ビットコイン取引は投資ではなく投機だ、と言いたいだけです。