日銀の次の一手はステルスETF買い入れ減額か
日銀が2016年9月に長短金利操作を初めて以来、年間の国債買い入れの目処は80兆円と維持されながらも、実際には年間50兆円程度しか買い入れを行わない、いわゆるステルス・テーパリング(正式表明がないままでの買い入れ減額)が行なわれています。昨年12月21日の金融政策決定会合の「主な意見」として金利水準調整の可能性に言及され、日銀の出口に向かう次の一手として市場は、現在0%程度とされる10年国債利回りの操作目標水準や事実上0.10%となっている許容上限利回りの引き上げに注目しています。
しかし、世界的に金利上昇圧力がかかる中、日銀による金利水準調整は日本でも過度な金利上昇圧力に発展するリスクがあり、それが次の一手となるとは思えません。とはいえ、日銀がバランスシートの膨張に徐々に歯止めをかけたいと考えていることは明らかで、次の一手は事実上のETF買い入れ減額ではないかとかんがえられます。実際「主な意見」でも、ETF買い入れ減額の可能性にも言及されています。
2016年7月に年間6兆円に拡大されたETF買い入れは、国債とは違い6兆円がノルマ的に買い入れられてきました。2017年を振り返ると、10月末時点では買い入れ合計額は4兆7,929億円で、年間6兆円ペースの5兆円を下回っていました。11月以降も日本株市場は堅調な展開が続き、買い入れ額が6兆円を下回る可能性が指摘されましたが、日銀は11月に5,976億円、12月に5,961億円を買い入れ、年間買い入れ合計額を5兆9,864億円とし、ほぼノルマ達成となりました。
私の分析によると、ETF買い入れ出動の基準は、広く解説されている通り、前場引け時点のTOPIXの前日比で決められており、加えて言うと、基準となる下落率は買い入れ消化ペースによって月ごとに見直されています。昨年の場合、10月末時点で消化がアンダーペースだったため、11月12月は買い入れ出動のハードルを下げたと思われます。この「月ごとの基準見直し」を「基準固定化」すれば、国債と同様に年間6兆円という目処を維持しながら、市場環境が良好なら結果として買い入れ額を6兆円よりも少なくできます。これがステルスETF買い入れ減額です。
これまでの買い入れ額は、月ごとにはかなりばらつきがありますが、四半期で1兆5,000億円というペースはかなり意識されてきました。(2016年10-12月期:1兆4,738億円、2017年1-3月期:1兆8,066億円、4-6月期:1兆2,582億円、7-9月期:1兆5,482億円、10-12月期:1兆3,736億円)したがって、もしステルス減額が始められても市場はすぐには気づきません。しかし、四半期合計の買い入れ額が1兆5,000億円を大きく下回ったことが判明した時点で、市場は気づくでしょう。それは株安要因になるでしょう。
国債とは違い、ETFには満期償還がないため、残高を減少させるには売却しかないため、残高増加に歯止めをかける優先順位は高いと思われます。買い入れ減額は株安要因だが、日銀は株価水準が十分に高ければ、ある程度の株安は許容されると考えるのではないでしょうか。日銀にとって、現状の株価水準がまだ不十分だとは考えにくいです。まずは、本日の金融政策決定会合の内容、黒田総裁の会見、本日発表される経済・物価情勢の展望レポートでの、政策調整に関する表現に注目です。