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2018年10月2日のマーケット・コメント

中国の対米行動は軍事にも-米国の追加制裁の口実となるか

 

日本時間の今日午前中に「米国海軍の駆逐艦が南シナ海を航行中に、中国海軍の駆逐艦が異常接近してきたため衝突を回避する行動を取らざるを得ない事態になった」という発表が米国海軍の報道官からありました。米国海軍は南シナ海の中国が建造した人口島付近を「航行の自由作戦」で、以前から何度も航行してきましたが、中国海軍の対抗活動が発表されたのは初めてです。

 

米国は中国に対する制裁関税として、7月6日に第1弾の340億ドル、8月23日に第2弾の160億ドル、9月24日に第3弾の2,000億ドルを発動し、中国は第1弾、第2弾に対しては同時期に同額の報復関税を発動しましたが、第3弾に対しては米国からの輸入額(約1,300億ドル)の限界で報復関税は600億ドルにとどまり、すでに金額の上では中国不利な状況となっています。

 

米国の狙いは、明らかに中国が将来米国にとって脅威的存在になることを回避するために、中国の国力を弱らせることであり、米中貿易戦争は米国有利な展開となっています。一方で中国は、昨年の全人代で習近平国家主席の独裁体制を構築し、その面子を守るために米国に折れるわけには行かない、という事情を抱えています。言い換えれば、面子を守るためには中国経済に悪影響を受けても仕方がない、と考えているということです。今回の軍事行動も、面子を守ることを優先したことの現われでしょう。

 

米国としては、中国が軍事的圧力行動に出てきたことに対して、おとなしく見逃すはずがなく、むしろ更なる制裁措置の口実に使おうとするでしょう。制裁関税の対象になっていない残り2,700億ドルすべてに対する追加制裁関税発動も、トランプ大統領の単なる脅しではすまなくなりそうです。中国経済は、昨年の過剰設備投資の反動減に、米国の制裁関税による悪影響が加わり、今後は経済統計の悪化が継続すると思われます。中国市場は国慶節の祝日のため今週は休場ですが、香港株は2%を越える大幅下落となっています。

 

日本株は外人投資家の先物の買い戻し主導で反発し、日経平均は年初来高値を更新しました。(TOPIXは本日引け値1,824.03に対して年初来高値は1,911.31)市場の一部には、中間決算発表時の業績予想上方修正期待もあるようですが、中国からの需要の減少は明らかな状況で、しかも米中対立や新興国通貨下落問題の行方が極めて不透明な中で、企業側からすれば上方修正どころか、下期見通しを慎重にせざるを得ない状況です。業績予想を下方修正しなくとも、多数の企業が決算説明会で下期見通しに慎重なコメントをすることが想定されます。引き続き、中国関連銘柄を中心に日本株には弱気な見方を継続します。

 

ドル円は、米国長期金利の高止まりなどを受けて114円台まで上昇が継続しています。ただ、先週末に発表された9月25日時点のシカゴ筋ポジションを見ると、円ショートが9月18日時点の113,507枚から131,972枚へ大幅増加、円ロングは49,752枚から47,253枚へ微減し、ネット円ショートは63,755枚から84,719枚へ大幅増加となっています。推計簿価は円ショートが111.45円、円ロングが110.42円なので、円ショート筋は含み益を持ちながら順張りでポジション増加、円ロング筋は含み損を抱えながら耐えている状況です。ドル・ショートは、ここまでの流れに逆らうことになることに加え、キャリー(保有)がコストになる(日米短期金利差がドル・ロングでは「貰い」、ドル・ショートでは「払い」になる)ため、お勧めはしませんが、何らかのきっかけで大きく動きやすいのは円高ドル安方向だということはご留意ください。