本日の日本株動向から伺える機関投資家の2つの行動-「銘柄入れ替え」と「配分削減」
一昨日は米国株が大幅下落し、それを受けて昨日の日本株も大幅下落となりました。それはある意味当然の反応と言えました。しかし、昨日の米国株は大幅反発となり、一昨日の下げの大部分を取り戻しました。NYダウは一昨日の下落の66%、S&P500は58%、NASDAQは64%を、それぞれ取り戻しました。本日の日本株は、寄り付きは米国株の大幅上昇を受けて前日比上昇で始まったものの徐々に下落して行き、前場引けでは前日比マイナス転換、後場にはいって更に一段安という展開となっています。前日の米国株が大幅上昇したにもかかわらず、日本株が明確な下落となることは稀です。
業種ごとの騰落率を見ると、その「稀な現象」の背景が浮き上がります。下落率上位には電機、精密、機械、化学など、いわゆる景気敏感業種が並んでいます。これまでの企業業績発表から、景気敏感業種に業種懸念が浮上したことによる売りが出ていることが伺えます。ただ、本日注目に値する動きはそれだけではありません。好決算だったエムスリー(2413)、何の材料もないリクルート(6098)などが急落している影響で、下落率トップの業種はサービスです。他にも食品、小売、情報・通信など、機関投資家の通常のディフェンシブ・シフト(景気敏感株を減らし、内需・ディフェンシブ株を増やす)では買われるはずの業種も下落上位に入っています。
この背景にうかがえるのは、日本株への配分削減です。アセット・アロケーター(資産配分決定責任者)から配分削減の指示を受けて、日本株担当のファンドマネージャーは保有銘柄すべての部分売却を行なっていると思われます。つまり、本日の日本株の動きから伺えるのは、ポートフォリオのディフェンシブ・シフトと日本株への配分削減に伴う保有銘柄全体の部分売却という2つの動きです。
昨日発表された10月15日の週の投資主体別売買動向で、外人投資家が10月9日の週の合計1兆8,283億円の売り越し(現物株3,290億円+先物1兆4,992億円)に続き、合計1兆1,156億円を売り越した(現物株2,120億円+先物9,036億円)ことがわかりました。中国からの業績への悪影響が顕在化している中、外人投資家は今後も日本株に対する売り越し姿勢を継続してくると思われます。
そうは言っても、下落し続ける相場はありません。2016年2、3月にもご説明しましたが、大きな急落の1波動での平均下落率は15%で、ほとんどが13-17%の範囲でした。これを今回に当てはめると、下落の起点を10月2日の高値24,448円とすれば、13-17%下落は20,292-21,270円となります。本日の安値は20,972円ですので、その範囲に既に入っていますので、本日に当面の安値を付け、ある程度まで反発となっても違和感はありません。戻り目処ですが下げの3分の1は必ず戻るが、半値戻しは必ずとは言えず、3分の2戻すことは稀、ということが過去の経験則です。(中期トレンドが下落転換した、ということが大前提での話です。)高値24,448円で安値20,972円になるとすれば、3分の1戻しは22,131円、半値戻しは22,710円、3分の2戻しは23,289円となります。一旦22,000円台には乗せても、200日移動平均線(現在22,468円)を越えるかどうかは微妙で「23,000円の壁」を越えることは困難、という感覚とも整合性が取れます。
外人投資家が日本株に対して完全に売り越し転換したことにより、日本株の中期トレンドが下落転換した、という私の見方にご賛同いただけるなら、たとえ短期トレーディングでも買いから入ることは避け、戻ったところを売りから入ってください。トレンドが下落なのであれば、売りから入れば多少タイミングを間違えてもいずれ助かりますが、タイミングを間違えて買いから入ってしまった場合、助からないどころか損が膨らんでいきますので。