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2018年10月4日のマーケット・コメント

トルコのインフレ加速&米国長期金利上昇

 

昨日トルコの9月のインフレ統計が発表されましたが、CPI(消費者物価指数)は8月の17.9%、事前予想の21.1%を大幅に上回る24.5%、PPI(生産者物価指数)も8月の32.1%、事前予想の39.6%を大幅に上回る46.2%でした。PPIはCPIに対して先行性があり、CPIは今後も更に上昇することが予想されます。(9月5日付コメント参照)9月13日にトルコ中銀は政策金利を17.75%から24.00%に引き上げましたが、実質短期金利は再びマイナスになり、更なる利上げ圧力がかかる状況となりました。

 

一方米国で昨日発表された、ISM非製造業指数は事前予想の58.0を上回る61.6、ADP雇用統計は事前予想の18.4万人増を上回る23.0万人増だったことを受け、米国長期金利は急上昇となりました。米国10年国債利回りは2011年以来の水準となる3.19%、米国30年国債利回りも2014年以来の水準となる3.34%となっています。

 

この新興国でのインフレ圧力と米国長期金利の上昇という組み合わせは、新興国から米国への資本逃避を加速させる要因です。トルコ以外の主要新興国のインフレ率は、南アフリカが4.9%(8月)、メキシコが4.9%(8月)、ブラジルが4.2%(8月)、インドが3.7%(8月)、インドネシアが2.9%(9月)となっています。それら各国の実質短期金利はプラス圏を保っていますが、通貨下落→輸入物価上昇→インフレ上昇、という悪循環に陥れば、トルコと同様の状況になりかねません。

 

今週急浮上してきたイタリアの財政問題は、世界の金融市場を揺るがすリスクだとは思えません。イタリアにとってユーロ圏離脱することによるデメリットが大きすぎて、ポピュリズムが優先するとは思えないからです。しかし、これまでもご説明しているように、新興国各国の「通貨下落」→「輸入物価上昇」→「インフレ上昇圧力」→「政策金利引き上げ」→「景気減速」→「通貨下落」という悪循環は、世界の金融市場を揺るがす大きなリスクです。

 

日本の場合は、特に中国経済の先行きが重要です。中国のCPI(8月)は2.3%、PPI(8月)は4.1%と、今のところインフレは問題になってはいません。しかし米国による制裁関税の悪影響が今後着実に顕在化していくことが予想される一方、中国元の過度な下落を防ぐために緩和的な金融政策を取れない状況です。政府の買い支えにより中国元の下落は防げるとしても、中国株の買い支えをどこまでできるかは疑問で、更に景気減速による中国関連企業の業績悪化は防ぎようがありません。今週は国慶節で中国株市場は休場ですが、香港ハンセン指数は今週4%超の下落となっており、休場明けの中国株市場の動向に注目です。