ソフトバンク携帯電話子会社(9434)上場について
ソフトバンク(9984)の携帯電話事業子会社の上場が決まりました。コード番号は9434、ブックビルディング期間は12月3-7日、上場日は12月19日、市場からの調達額は2兆6,461億円です。超大型IPOであり、さっそくTVコマーシャルやチラシ配布が始まっています。資金繰りが厳しい親会社のソフトバンク(9984)にとっては、巨額な資金調達ができるわけですから当然ポジティブなのですが、投資家は子会社株(9434)を買うべきでしょうか?
結論から言いますと、答えはノーです。言うまでもないですが、株式投資の投資判断で基準になるのは「中期的利益成長性」と「各種指標(バリュエーション)での割安感」です。まず「中期的利益成長性」ですが、今度上場する子会社の事業は、日本での携帯電話事業です。携帯電話の普及は既に飽和状態にあり、また緩やかに人口減少している日本のみで事業を行なって大手3社のシェアの取り合いで、さらに政府から携帯電話料金の値下げを要求されていると、どの方向から見ても中期的に利益は成長するどころか減少する可能性が高いです。
次に「各種指標(バリュエーション)での割安感」です。予定公開価格は1,500円で今期予想EPS(1株当たり利益)は88円、BPS(1株当たり純資産)は230円、配当は37.5円ですから、予想PER17倍、PBR6.5倍、配当利回り2.5%です。一方、競合相手のNTTドコモ(9437)は予想PER13倍、PBR1.6倍、配当利回り4.3%、KDDI(9433)は予想PER10倍、PBR1.4倍、配当利回り4.0%です。割安感がないどころか、どの指標からも割高感しかありません。
今回の上場は、政府保有株の売出しなどと同様に、幹事証券会社が買い手である投資家ではなく、完全に売り手(今回の場合は親会社のソフトバンク)を向いた案件であり、投資家は参加してはいけないディールだと断言できます。
訂正:上記の配当37.5円は半期の配当で、年間配当は75円、配当利回りは5.0%でした。ただ、配当性向は85%と極めて高水準であり、減益により配当性向が100%を越える、あるいは減配されるリスクがあり、見送り方針に変更はありません。