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2018年12月3日のマーケット・コメント

米中首脳会談の結果について

 

先週末に世界が注目した米中首脳会談が行なわれました。その結果は、米国側の発表によると「年明けに予定していた2,000億ドルの中国製品に対する関税率10%から25%の引き上げを、最大で90日猶予する。その間に構造改革に関して中国と合意ができなければ、25%に引き上げる」でした。一方、中国側の発表によると「2,000億ドルに対する関税率引き上げは猶予され(期限への言及なし)、先に25%の関税対象になっていた500億ドルについても取り消す方向で協議。米国産の農産品やエネルギーを大量購入する(構造改革への言及なし)」でした。

 

両国首脳が「合意」したはずの内容が、発表する国によって異なる、という異例の事態ですが、これは本質的な「合意」ではなく、両国首脳にとって都合がいい形で切り上げた、と見ていいでしょう。トランプ大統領にとっては、2,000億ドルに対する関税率引き上げという攻撃カードの賞味期限延長が図れ、習主席にとっては手ぶらで帰る訳にはいかないというメンツ上の事情でしょう。つまり、単なる問題の先送りに過ぎず、いずれ米国側が構造改革の行動を取ろうとしない中国を批判し始めるのは目に見えています。

 

市場では米中貿易戦争が沈静化の方向に向かうことを期待した反応となっていますが、会談が不調に終わることに賭けていたショート筋の買い戻しに過ぎない可能性が高いと思われます。そもそも中国経済の減速の原因は、2017年の過剰ともいえる設備投資の反動で設備投資サイクルがピークアウトしていることです。米国による制裁関税は、いわば副次的要因であり、悪化の速度を多少変える要因に過ぎません。むしろ、トランプ政権が制裁関税カードの賞味期限延長を図ってきたことで、悪影響の長期化が予想されます。

 

とはいえ、日経平均は越えないと思っていた11月の戻り高値22,583円を越える動きとなったことを受けて(引け値は22,575円と戻り高値よりわずかに下)、売り増しはピークアウトを確認してから行なうべきでしょう。ドル円は本日上昇して始まった後、株高にもかかわらず下落しており、市場は「リスクオン=ドル売り、リスクオフ=ドル買い」という図式に変わったことが確認できました。もはや「リスクオフ=円高」ではなくなった、ということであり、株下落でも大きく円高が進む可能性は低いと見るべきでしょう。