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2018年3月12日のマーケット・コメント

米雇用統計&森友文書書き換え問題

 

先週金曜日に発表された米雇用統計ですが、非農業部門雇用者数変化が事前予想の20.5万人増加を大きく上回る31.3万人増加(前月データは20.0万人増加から23.9万人増加に修正)、前年比平均時給は事前予想の2.8%増加を下回る2.6%増加(前月データは2.9%増加から2.8%増加に修正)という内容でした。米国株急落のきっかけになった前回の雇用統計は、非農業部門雇用者数変化が強くない中、前年比平均時給が急増という内容でしたので、今回はその逆で、経済状況が良好な中、時給の伸びは穏やかという内容で市場は好感し、米国株は大幅上昇となりました。

 

米国株の直近高値安値の戻り率を指数別に見ると、NYダウは61%戻り、S&P500は75%戻り、NASDAQは1月26日高値7,505.77に対し金曜日終値7,560.81と全値戻って最高値更新、となっています。この背景には、アマゾンをはじめとする、昨年の米国株上昇を牽引してきた銘柄の株価は大きく戻っているものの、景気敏感業種銘柄の株価の戻りは鈍いことがあります。市場変動が世界の実体経済へ悪影響を及ぼし、世界的な景気後退局面を迎えるリスクは市場から払拭されたものの、中国をはじめとする新興国の景気サイクルピークアウトによる緩やかな景気減速リスクは、いまだに市場にくすぶっているということです。

 

このまま米国株市場のボラティリティの低下傾向が続き、上昇基調が続くようなら、市場変動が実体経済に悪影響を与える事態は避けられるでしょう。しかし、一旦限界点を越えて高まったボラティリティは完全な収束までには時間がかかるのが通常であること、および「市場変動」と「実体経済でのリスク許容度の低下」は相互作用する性質のものであること、の2点を考えると、安心しきるのはまだ早いと考えます。つまり、まだいつ再び米国株が急落してもおかしくなく、それにより実体経済のリスク許容度が低下(新規設備投資や耐久消費財買い替えの見送り)につながって行く可能性は排除できないのです。

 

今週の米国関連の材料としては、13日の消費者物価指数、ペンシルベニア州下院補欠選挙、14日の小売売り上げなどが挙げられますが、市場はかなり収束ムードとなっており、サプライズ的な動きがあるとすれば下落方向でしょう。

 

日本では本日午前中に、財務省が森友関連文書の書き換えを行なったことを認めた、という報道を受けて、株、ドル円ともに急落しました。安倍政権サイドは「財務省が勝手に忖度して行なったことで、官邸が指示した事実はない」として、政権の退陣まで至るとは思えませんが、政権運営に一定の支障をきたすことは確実で、日本株の上値を抑える要因でしょう。現在の日経平均(13時25分現在21,765.55円)は、直近高値から安値までの26%戻りにすぎません。日本株の戻りが鈍いのは、NYダウの戻りが鈍いのと同様、市場全体に占める景気敏感業種の比率が高いことが主要因ですが、しばらく国会空転などを見せられることで、森友問題が外人投資家の腰をさらに引かすことになるでしょう。

 

最後に、先週末に発表された3月6日時点のシカゴ筋ポジションのアップデートですが、円ショートは136,902枚と2月27日時点の141,190枚から更に減少、円ロングは44,539枚から50,057枚へ増加、差し引きのネット円ショートは96,651枚から86,845枚へ大幅減少となりました。ネット円ショートは3週連続での大幅減少となり、ポジション整理は相当進んだ印象です。小口投資家合計を表す非報告ベースは8,075枚のネット円ロングから9,964枚へのネット円ロングとなりました。105円台前半は割れない、と見てよさそうです。しかしながら108円台回復とならない限り、105円台前半-107円台後半のレンジでの不安定な動きが続きそうです。