米小売売り上げ&トランプ政権人事
昨日発表された2月の米小売売り上げ(前月比)は、事前予想の0.3%増よりも弱い0.1%減となり、3ヶ月連続の減少でした。減少を牽引しているのは引き続き自動車で、自動車を除くと0.2%増(事前予想0.4%増)でした。これを受けて、米国10年国債利回りは2.84%から2.81%に低下、米ドルは若干の下落、米国株は軟調となりました。NYダウは249ドル(-1.00%)の下落でしたが、このうち57ドルはボーイングの影響で、S&P500は-0.57%、NASDAQは-0.19%に留まり、米国株市場全体で米国経済への懸念が出たというほどではありません。米国株は直近安値と直近戻り高値の間でのボックス相場、という見方を維持しますが、安値を切り上げてきており、直近の戻り高値を上抜ける展開も考えられます。
日本株の戻りが米国株に比べて鈍いのは、前回のコメントでご説明したとおり、新興国景気サイクルのピークアウト懸念から世界的に戻りの鈍い景気敏感業種の比率が高いからなのですが、景気敏感業種の損益に影響を与えるドル円レートが、多くの企業の想定レート110円を大きく下回って推移していることも、出遅れの背景にあるでしょう。年初からの円高ドル安進行は、ドル安主導でした。しかし、ドル・インデックスは2月16日に88.253で安値を付けて以降、値固めの動きとなっており現在は89.655(安値比+1.59%)です。2月16日のドル円の安値は105.55円だったので、本来ならば107円台前半(105.55×1.0159=107.23)でしかるべきなのですが、現在のドル円は106円割れですので、1円以上円高になっていることになります。
毎年3月期末に向けて、日本企業が海外企業(多くの場合海外子会社)から得た配当金を円転する需要が発生するため、円高になりやすいという季節性があります。今年の場合は、円の先高観からその動きが通常よりも、やや早めに出たと想定され、その需要はそろそろ出尽くすと見られます。「FRB、ECBに続き日銀も出口に向かい始めた」との見方が特に海外で一時取りざたされましたが、3月9日の日銀決定会合後の会見で黒田総裁は明確にそれを否定しましたので、その懸念も払拭されていくはずです。
米国長期金利も安定してきており、3月21日FOMCで「減税や財政出動によるインフレ加速懸念を未然に防ぐために、FRBは着実な利上げ方針を堅持する。今年の利上げ回数は4回もありえる。」ということを打ち出せば、米国でのインフレ加速懸念は後退し、米ドル反発に繋がると予想されます。季節的な円高要因が消え、米ドルが反発となれば、ドル円は108円台回復から110円トライまでの上昇が期待されます。
トランプ政権の人事ですが、国家経済会議委員長にクドロー氏が指名されました。先日辞任した保護式貿易反対派のコーン氏の後任に、積極的保護主義推進派のナバロ氏が指名されるのでは、という懸念がなくなったこと、およびクドロー氏は指名を受けて強いドルを志向することを表明していることは、ドル反発の支援材料でしょう。国務長官に、電撃解任されたティラーソン氏の後任に対外強硬派のポンペオCIA長官が指名されたことは、潜在的な地政学リスク増加要因ですが、それが表面化するまでは市場はそれを織り込まないと思われます。