ドル円のポジション整理は相当程度進行だが、目先は日米政局が重石
先週末に発表された3月13日時点のシカゴ筋ポジション(非商業ベース)ですが、円ショートが3月6日時点の136,902枚から123,835枚へ大幅減少、円ロングは50,057枚から44,296枚へ減少となり、差し引きのネット円ショートは86,845枚から79,539枚へ4週連続の大幅減少となりました。7万枚台のネット円ショートは、昨年9月19日に51,322枚で底打ちした直後の9月26日時点の71,347枚以来で、ポジション整理は相当程度進行した印象です。
しかしドル円の重石となっているのが、日米の政局です。米国では、コーン氏(元国家経済会議委員長)、ティラーソン氏(元国務長官)に続き、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)の解任の一部報道もあり、対中国保護貿易積極派で政権が固められています。この動きは明らかに、米ドル反発の阻害要因になっています。日本では、森友問題関連の財務省文書の改ざんが、野党による安倍政権攻撃材料となっており、内閣支持率が急低下しています。リスクオフによる円買いに繋がりやすい状況です。この問題で安倍首相が辞任に追い込まれるとは思えませんが、政権にとって最悪の展開となった場合、麻生財務相辞任まではあり得るでしょう。
今週21日には、パウエルFRB議長にとって、議長として始めて迎えるFOMCがあります。市場の織り込みは「年内利上げ4回の可能性を示唆することはあっても、ドットチャートの中央値は12月と同様に3回」だと思われますが、米減税法案成立が12月FOMC後、米財政法案成立が1月FOMC後だったことを考えると、それら2点のインフレ加速要因を意識して、何人かのFOMCメンバーが年内の予想利上げ回数を引き上げる可能性は十分あると思われ、またドットチャートに大きな変化がなくとも、それら2つの要因によるインフレ圧力は着実な利上げによって未然に制御することを声明で打ち出せば、米ドルの反発に繋がるでしょう。
その際に米短期金利は上昇が予想されますが、米長期金利は微妙です。短期金利上昇につられて長期金利も上昇する可能性がある一方、インフレ制御を積極化することを受け、期待インフレ率(BEI率)が低下することにより、長期金利は上昇しないどころか低下する可能性もあるからです。昨年末の米減税法案成立直前のBEI率は1.95%でしたが、その後、米財政法案成立直後の2.14%まで上昇が続き、現在に至るまで高止まっています。先週末は2.09%でしたが、FRBが目標とする2%まで、0.1%程度の低下余地はあります。先週末の米国10年国債利回りは2.85%でしたから、2.75%程度までの低下はあり得るということです。
もし短期金利上昇を受けて長期金利が上昇するようであれば、目先の米国株にとっては下落要因になるでしょう。一方で、もし短期金利が上昇しても長期金利が上昇しない、あるいは若干でも下落するようであれば、目先の米国株にとってはややポジティブに作用すると思われますが、イールドカーブのフラット化が進むことになるため、中期的な米国景気サイクルのピークアウト懸念が出てくるでしょう。(過去イールドカーブのフラット化が進み、短期金利水準が長期金利水準を上回る、いわゆる逆イールドになると、早晩景気後退に向かった、という経験則があります。)