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2018年3月23日のマーケット・コメント

米中貿易戦争開戦

 

昨日トランプ大統領は、中国による知的財産権の侵害を理由に、中国製品に高関税を課すことを正式表明しました。それを受けて米国市場の反応は、株下落、ドル円下落(ドル・インデックスは横ばい)、債券上昇と、いわゆる典型的な「リスク・オフ」の反応となりました。米国株下落、ドル円下落を受けて、日本株は大幅下落となりました。

 

今後の展開を予想する上で重要なのは「中国経済減速による影響」です。まだ詳細は明らかになっていないとは言え、中国製品に高関税を課すということは、中国経済にとってネガティブであることは確実です。中国でよく売れている米国製品はほとんどないため、米国経済への直接の悪影響は軽微ですが、日本の場合、中国向け売り上げの伸びが今期の業績成長を牽引している企業が多く、相当程度の直接的な悪影響をこうむります。それが今日、日本株の下落率は昨日の米国株の下落率を大きく上回っている理由でしょう。特に業績に悪影響を大きく受けるのが、ファナック(6954)、安川電機(6506)、ダイフク(6383)、THK(6481)、SMC(6273)などの省力化設備投資関連銘柄、コマツ(6301)などの建設機械銘柄であり、実際にそれら銘柄は本日大きく下落しています。

 

今日引け後に発表された主体別売買動向を見ると、1,761億円と規模は縮小したものの先週も外人投資家は売り越しで、これで10週連続売り越しです。今週もおそらく売り越しだと推察され、来週の木曜日の引け後には11週連続売り越しが発表されるでしょう。森友問題をめぐる政治混乱に加え、中国経済減速の影響度の高さという日本特有の問題が増え、外人はますます売り越し姿勢を強めてくると想定されます。

 

ドル円ですが、朝方にポジション整理と思われる売りが出て以来、日中は日本株が下落を続ける中でもみ合いの動きとなりました。フシの105円を割り込んでしまいましたが、今日のNY引けで105円台を回復できれば、依然として105円が下の抵抗線として機能して行くでしょう。それがメインシナリオですが、逆にNY引けが104円台前半以下となれば、最低でも103円、最大で100円までの下落余地が生じ、105円が上の抵抗線になってしまうことがリスクシナリオです。

 

リスクシナリオの可能性は高くないと考えている理由は、中国経済減速が円買い(最近のドル円下落は、ドル安主導ではなく円高主導)に繋がるロジックはなく、円高が持続的トレンドとなるとは思えないためです。また整理されるべき円ショート・ポジションも、もはやほとんど残っていないと思われることもあります。

 

結論として、

1.今回の株価下落はトランプ大統領の米中貿易戦争開戦宣言による、中国経済減速懸念が背景。時間をかけて進行する息の長い悪材料であり、米国株がトレンドとして下落に転じ一気呵成に下落するというよりも、直近安値(NYダウで言うと23,360.29)と直近戻り高値(NYダウで言うと25,800.35)のレンジ内での値動きの荒いボックス相場の範囲内。

2.日本株は基本的に米国株と連動だが、日本株は米国株より上昇は小さく下落は大きい。日本株は米国株に対してアンダーパフォームが続く。

3.ドル円は105円近辺での値固めの後、105-108円のもみ合い。目先は3月27日の佐川氏国会証人喚問で森友問題が深刻化しなければ、レンジの中心である106円台半ばまでは戻るか。