シカゴ筋円ショート・ポジション激減
先週末に発表された3月20日時点のシカゴ筋ポジション(非商業ベース)ですが、円ショートが3月13日時点の123,835枚から69,901枚へ激減、円ロングは44,296枚から47,902枚へ小幅増加、結果として差し引きのネット円ショートは79,539枚から21,999枚へ激減となりました。ネット円ショート21,999枚は、トランプ大統領当選後にネット・ポジションが2016年11月29日に円ロングから269枚の円ショートに転じて以来の低水準です。(これまでの最低水準は2017年4月25日時点の26,869枚)円ショート69,901枚も、同期間で2017年5月2日時点の68,002枚に次ぐ低水準です。
トランプ大統領による米中貿易戦争開戦宣言がなされたのは3月21日で、それを受けてドル円は106円台から105円割れへの下落の動きとなっていますので、3月20日以降はネット円ショートは更に減少したと想定されます。円ショートのうち一部は日米金利差に着目した中期ポジションであると思われることを考えると、純粋な短期ポジションはすでにネット円ロングに転じたと言えそうです。
目先のリスク要因を挙げると、
1.米国で安全保障担当大統領補佐官が、穏健派のマクマスター氏から武闘派のボルトン氏に変わり、米国の外交政策の過激化が懸念されること。
2.米中貿易戦争激化により、中国経済の減速が懸念されること。
3.森友問題により安倍内閣支持率が急低下し、今後の展開次第では麻生財務相辞任がありえること。
これらの市場インパクトとしては、
1.北朝鮮政策過激化(核放棄の強要や武力行使など)の懸念からリスクオフ=株安、債券高、対新興国通貨でのドル高、避難通貨の円高
2.中国依存度が高い銘柄の株価下落=機械、輸送用機器、資源関連業種などの株価下落
3.これまでの安定政権が不安定化=外人投資家の売却による日本株下落
です。
つまり、これらリスクによる円買い要因は、1.によるリスクオフだけであり、これも過去の条件反射によるもので円が避難通過だという論理的説明は成り立ちません。また外交の過激化懸念は漠然としたものであり、はっきりとした言動がない限り市場の織り込みは進まないことが想定されます。需給面の整理(ポジション整理)が終了した以上、後は短期筋が順張りでどれだけ円を買い上げるか、という要因しか現状から更に円高進行となる背景はなく、現状のドル円は底値圏にある、とみていいでしょう。ただ、底値圏にある=底打ち反転、ではなく、ドル円上昇に繋がる材料が出てくるまでしばらく底値固めの動きが続く、という展開も十分考えられます。
ドル円の反発局面では、かなり売られた位置にある日本株もある程度反発する可能性が高いと思われるものの、上記2.のリスクは息長く存在することになるため、戻りは売りの姿勢で臨むべきでしょう。「日本企業の業績は好調」「業績に対するバリュエーションは割安」との意見が大勢を占めますが株式市場は足元の業績よりも、先行きの業績を織り込んで動くものだからです。現に、足元の業績には変調ない中で株価はすでに大きく下落していることが、それを証明しています。