米ドルと米金利は逆相関解消のための逆相関の動きに
2月21日のコメントで以下のようにご説明しました。
「さて、少し長めの今後予想される展開です。以前に何度かご説明したドル円と日米長期金利差変化との相関ですが、昨年11月半ばあたりから相関が崩れ始め、今年に入ってからはむしろ逆相関になっています。この現象に対して様々な解説が行なわれていますが、私の解釈は以下の通りです。
1.11月半ばから米国での減税法案可決の可能性が報じられ始め、年末に法案可決となり、年明けから減税によるインフレ懸念が出てきた。「インフレ懸念=長期金利上昇要因&通貨下落要因」なので、「米国長期金利上昇&ドル下落」となった。(2017年11月半ばから2018年1月末頃まで)
2.米国株急落により、リスクオフ(既存のポジションの解消)の動きが広がり、金利動向とは関係なく、円ショートに大きく傾いていた短期筋ポジションの解消が出た。(今月)
2.のポジションの解消はすでに終了した可能性が高いため、今後を占う上での問題は1.のインフレ懸念が加速して行くかどうかです。「インフレ懸念が、減税実施による一時的なものであり、商品価格高騰や景気過熱によるものではないこと」および「インフレ懸念を加速させないために、FRBは継続的な利上げを行なおうとしていること」を考えると、いずれ過度なインフレ懸念は沈静化の方向に向かう、と思われます。
今後、雇用統計などで過度なインフレ懸念に繋がるような内容の経済統計が出ず、3月21日のFOMCで予想通りに利上げが行なわれ、かつ「今年の利上げ回数は4回の可能性もある」という内容の文言が声明文に盛り込まれれば、インフレ懸念は沈静化し、「長期金利低下&ドル上昇」という変化(逆相関解消のための逆相関)が起こり、その後はドル円と日米長期金利差変化の相関が戻る、と想定されます。」
実際には米国株の不安定な動きに伴うリスクオフの動きは、3月に入ってからも継続しましたが、3月20日時点のシカゴ筋ポジションの劇的な減少、その直後に105円割れで更にポジション変化があったと思われ、ポジション整理は3月23日に完全に解消されたと見られます。米国株が大幅反落となった3月27日に、ドル円がほとんど下落しなかったこともそれを裏付けているでしょう。
米ドルと米金利の動きですが、3月27日には米国株大幅下落の中、米国債券大幅上昇(金利大幅低下)、米ドル小幅上昇となり、昨日は米国株小幅下落の中、米国債券横ばい、米ドル大幅上昇となりました。1日のタイムラグはありますが、27日と28日の動きをあわせると債券大幅上昇、米ドル大幅上昇となっています。これは、上記引用部分で予想した「逆相関解消のための逆相関」の動きです。
昨日の米国10年国債利回りは2.78%で、その内訳はBEI率2.06%、物価連動債利回り0.72%ですが、過度なインフレ懸念が完全に払拭されれば、BEI率2.00%、物価連動債利回り0.60%の2.60%程度まで利回りの低下余地は想定できます。その時、ドル・インデックスは現在の90程度から1月半ば頃の91程度までの反発が想定され、更に2月以降の円高進行分が戻れば、ドル円は110円程度まで戻る、と想定できます。
もし昨日のコメントでご説明したような、資産配分変更に伴う株売却の動きとなり、米国株がボックスを下抜けする場合、再びリスクオフの動きが強まることが想定されますが、リスクオフとは既存のポジションの解消であり、現在積みあがっているポジションは米ドルショート、米国債券ショートであることを考えると、米ドル反発、米国債券反発という流れは継続でしょう。ただ、その場合はリスクオフによる円高進行は解消されないことになるため、ドル円の上値は108円を越えられない程度になるでしょう。