主体別売買動向で見る外人投資家動向
本日15時に発表された、2月第4週(2月26日-3月2日)の主体別売買動向ですが、外人投資家は3,486億円の売り越しで、2月月間としては1兆1,282億円の売りこしとなりました。2月の買い手は個人で、先週は3,359億円の買い越し、月間では1兆2,377億円の買い越しでしたから、外人投資家の売りを個人がそっくり買った、という形です。
2012年11月にいわゆるアベノミクス相場が始まってからの、外人投資家の手口の累計を見ると、2015年5月に累計買い越し額20兆8,394億円でピークを付け、その後は売りこし傾向が続き、トランプ選挙前の2016年9月に累計買い越し額は11兆5,542億円まで減少しました。その後は増減が続きましたが、2017年10月に2兆2,376億円を買い越し、累計買い越し額は15兆6,464億円まで戻りました。2017年11月以降2018年2月までは4ヶ月連続売り越し、累計買い越し額は13兆2,883億円まで減少となりました。
2017年10月に買い越してきた資金はおそらく短期資金とみられ、2017年10月の買い越し額と、2017年11月から2018年2月の売り越し額合計はほぼ同じですので、2017年10月に買い越したポジションは完全に解消されたと想定されます。ただ、累計買い越し額がボトムをつけた2016年9月以降の2016年10月から2016年12月(ちょうどトランプ相場の時)の買い越し合計額2兆5,004億円は、トランプ政策効果を期待した中期投資家の買いだったと想定されますが、その分の売り圧力はまだ大部分が残っていると想定されます。
ちなみに、これまで個人が単月でほぼ1兆円以上の買い越しとなったのは、データが採れる1999年1月以降で、2014年1月(1兆4,270億円)、2008年10月(9,928億円)の2度しかありません。2014年1月はQE3減額開始を受けて日経平均が16,000円から14,000円に下落した局面、2008年10月はリーマンショックにより11,000円台から7,000円割れまで急落した局面でした。
2014年1月の場合、前月末の水準を回復したのは同年の11月でしたから回復に10ヶ月、2008年10月は前月末の水準回復が2013年2月でしたから回復になんと4年3ヶ月もかかりました。リーマンショックの時の例は極端だとしても、1月末の23,000円台回復までは相当な時間がかかる可能性を過去の事例は示唆しているのではないでしょうか。最も、サンプル数がわずか2つであり、統計学的には何の意味もありませんが。
そこでサンプル数を増やすために、ハードルを「ほぼ1兆円」から「ほぼ5,000億円」に下げて、振り返ってみます。するとリーマンショック前後以降では、2016年1月(7,974億円)、2015年8月(5,852億円)、2011年8月(6,088億円)、2010年5月(8,731億円)、2008年6月(6,365億円)、2007年8月(5,857億円)がサンプルとなります。2007年8月はパリバショックを受けた下落相場の始まりの急落、2008年6月はリーマンショックに向かう下落相場の途中の反騰局面の終了直後、2010年5月はギリシャ問題による急落、2011年8月は米国債務上限問題直後の謎の急落、2015年8月は元切り下げショックによる急落、2016年1月は資源価格急落を受けた急落、と個人は急落に買い向かうのが大好きだ、ということがわかります。また、どのサンプルをとっても急落月は「いい買い場」にはなっておらず、回復には相当の期間がかかっています。
結論としては、「米国株も日本株もレンジ内での値動きが荒いもみ合い。レンジは直近安値から直近高値と考えるのが自然であり、NYダウで言えば23,360-25,800ドル(安値からおよそ3分の2戻りの範囲)、日経平均で言えば20,937-22,502円(安値からおよそ半値戻りの範囲)」という見方を維持し、日経平均23,000円台への回復には(たとえ下落トレンドに転換とならないとしても)相当の時間がかかる、ということです。