資源価格上昇は世界経済の重荷に-株式市場にもネガティブ
米国の対ロシア追加制裁発動、それに対するロシアの資源禁輸措置を懸念して、資源価格が急騰しています。日本株市場でも、先日はロシア産チタニウムの禁輸による需給ひっ迫可の思惑から大阪チタニウム(5726)、東邦チタニウム(5727)が急騰したり、本日はニッケルの急騰を受けて住友金属鉱山(5713)などの関連株が急騰したりしています。確かに、資源価格上昇はそれら関連銘柄の利益増加に繋がりますので、その株価反応に違和感はありません。
しかし、資源価格の上昇は、それらを原材料として使用する企業にとっては原材料価格上昇であり、もしコスト上昇分が価格転嫁されれば、製品価格の上昇となります。インフレ圧力が上昇するわけですが、賃金増加を起点とする良いインフレ(ディマンドプル・インフレ)ではなく、原材料価格上昇によってもたらされるインフレは「コストプッシュ・インフレ」であり、景気に対して悪いタイプのインフレです。
昨日、米国10年国債利回りは2.83%から2.88%に5bp(0.05%)上昇しましたが、そのうち2bpがBEI率(期待インフレ率)の上昇、3bpが物価連動債利回りの上昇でした。すなわち、期待インフレ率自体も上昇し、それによりFRBが利上げ姿勢を強めるとの織り込みで物価連動債利回りが上昇した、ということであり、債券市場では資源価格上昇をネガティブに捕らえています。
しかし米国でも日本でも、株式市場全体が資源価格をネガティブに捉えている様子はありません。関連銘柄が上昇しただけに留まっています。ただ、資源価格上昇によるインフレも、長期金利の上昇も、どちらも景気にとってはネガティブな要因です。ちょうど日米で業績発表が進行する時期でもあり、主要企業の業績ガイダンスで原材料価格上昇による影響に言及があれば、株式市場全体もネガティブな反応を始める可能性は高いと思われます。
日米ともに主要株価指数は、ちょうど75日移動平均線近辺まで戻っており、戻り一服となりやすいという要素もあります。株価が戻ってくると、証券会社各社は「外人売りが一巡で本格的な底打ち反転」などとコメントしますが、現状水準からは更なる上昇を期待するよりも、反落に対して警戒するという冷静な対応が重要だと思います。先ほど発表された主体別売買動向で、外人投資家は先週現物は845億円の小幅買い越し、先物は4,883億円の大幅買い越しとなり、3月SQ以降の先物手口はほぼ売り買いトントンとなりました。外人の先物買い戻しも一巡の可能性があります。