米国市場では「悪いインフレ」の織り込みが始まる
資源価格の上昇を受けて、先週金曜日の米国市場ではコストプッシュ型の悪いインフレに対する警戒が織り込まれ始めました。インフレ圧力上昇とそれに対する利上げ姿勢の積極化懸念から米国債券は下落、金利上昇による借り入れコスト上昇懸念から米国株も下落しました。米国10年国債利回りは、4月17日の2.83%から20日には2.96%まで上昇、本日の東京市場では2.98%まで上昇し、2月21日に付けた直近高値2.95%を上回ってきています。4月17日から20日までの0.13%上昇の内訳は、BEI率上昇が2.14%から2.18%、物価連動債利回りが0.69%から0.78%と、期待インフレ率上昇が0.04%、利上げ積極化懸念で0.09%となっており、新パウエル体制のFRB利上げ積極化懸念が先行している形になっています。
ただ、0.78%という物価連動債利回りの水準は、過去5年間の最高水準であり、実際にインフレ率が高まりを見せ、BEI率が上昇しない限り、米国10年国債利回りが過去5年間の最高水準である3%を越えて上昇していくとは考えにくく、現状水準からの更なる金利上昇のリスクは、少なくとも当面は限定的だと思われます。米国での金利上昇を受けて、ドル・インデックスは上昇、ドル円は小幅上昇となりフシメの108円トライの水準となっていますが、現状以上の金利上昇がなければ、ドル円上昇余地もないということになり、108円は越えられず依然として105-108円のレンジ継続となりそうです。
先週末に発表された4月17日時点のシカゴ筋ポジション(非商業ベース)は、円ショートが4月10日時点の47,094枚から46,842枚へ微減、円ロングが49,855枚から49,433枚へ微減、その結果差し引きのネット円ロングは2,761枚から2,591枚へ微減と、ほとんど動きはありませんでした。どちらの方向にもエネルギーは溜まっておらず、方向感の出ないドル円相場を裏付けています。レンジをブレイクするとすれば、円ロングが増えながら円高進行、円ショートが増えながら円安進行のどちらかですが、日米金利差によるキャリーの「払い」と「貰い」の違いを考えると、ブレイクするとすれば108円突破の円安進行の可能性が高く、108円近辺でドル・ショートするのではなく、105円近辺でドル・ロングするという目線で臨むべきでしょう。
前回のコメントでご説明したように、米国株は「悪いインフレ」「悪い金利上昇」を嫌気し始めましたが、日本株はドル円小幅上昇や業績発表直前ということなどにより、米国株下落にもかかわらず本日比較的底堅い動きとなっていますが、現状水準からは上昇余地よりも下落余地の方が大きいと思われます。