米中貿易戦争から日本企業が受ける悪影響
3月22日にトランプ大統領が、中国製品に総額500億ドルの関税を課すと表明しましたが、昨日はその対象となる約1,300品目が発表されました。ハイテク製品や家電製品が中心で、5月11日まで一般の意見を募り、5月15日にはワシントンで公聴会が開催される予定です。
この関税措置が実行された場合、製品ごとに以下の2つの影響が考えられます。
1.関税課税後の中国製製品価格と同等以下の価格の代替品がある場合、中国製製品の売り上げが減少する。(中国企業の売り上げの減少)
2.中国製製品の代替品が無い場合、あるいは代替品はあるが関税課税後の中国製製品の価格よりも代替品価格が高い場合、米国での中国製製品が値上がりする。(中国企業の売り上げは不変)
これらによる影響として、まずいずれにせよ米国での中国製品の値上がりが起きますが、500億ドルという規模は米国経済にとっては軽微であり、悪影響が顕在化することはないでしょう。問題は、上記1.による中国企業の業績悪化、それに伴う中国経済の減速からの影響です。中国製品の売り上げ減少から直接的に影響を受けるのは、それら製品の部品や部材を供給している企業の売り上げ減少です。日本企業でいえば、電子部品メーカーがその代表でしょう。
更に、中国企業業績の悪化や中国経済の減速は、企業の投資マインド、消費者の消費マインドを冷やします。資金フローが悪化した時に、まず削減されるのが企業でいえば設備の更新、個人でいえば耐久消費財の買い替え見送りだからです。日本企業でいえば、機械、輸送用機器などが影響を受けます。また、中国経済の減速は商品価格下落につながるため、素材、海運、商社なども影響を受けるでしょう。
先日、中国が報復として米国製品に総額30億ドルの関税を課す、と発表しましたが、500億ドルの10分の1にもならない金額です。つまり、米国から中国へ輸出されている物品は限られ、また中国経済減速からの影響も米国企業にとっては軽微になるのに対して、日本企業が受ける影響は大規模なものに発展する可能性があるのです。したがって、以前からご説明しているように、株式市場で米中貿易戦争が問題視され続けるのであれば、日本株は米国株に対してアンダーパフォームが続く可能性が高いのです。
特に、過去1年で中国向け売り上げの大幅増加によって業績が大きく成長し、株価も大きく上昇した省力化投資関連企業が最も影響を受ける可能性があります。それら企業の株価は日本株全体の上昇のけん引役となってきましたから、逆回転が始まるとなれば日本株全体の下落の牽引役になってしまうでしょう。具体的に名前を挙げると、ファナック(6954)、キーエンス(6861)、安川電機(6506)、SMC(6273)、ダイフク(6383)、THK(6481)、オムロン(6645)などとなります。