ドル円は上昇持続の可能性大-早期の利食いは避け、押し目は買い増しの目線で
ドル円は、フシ目の110円と200日移動平均線(現在110.21円)を明確に上抜けて、上昇トレンドが続いています。次のチャートのフシ目は112円ですが、そこでポジションを利食うのではなく、もし110円までの押し目があれば、そこは買い増し機会と捉えるべき状況だと思います。理由はポジション状況と米国長期金利動向です。
まずポジション状況ですが、先週末に発表された5月15日時点のシカゴ筋ポジション(非商業ベース)は、円ショートが5月8日時点の57,274枚から61,246枚へ微増、円ロングが51,812枚から64,926枚へ増加、その結果ネットは5,462枚のネット円ショートから3,680枚のネット円ロングとなりました。5月8日から5月15日のドル円動向は、109円近辺から110円越えへ明確な円安ドル高進行でしたから、円ショート筋は含み益が増える中で若干のポジション積み増し、円ロング筋は評価損が増える中でナンピンによるポジション積み増し、という状況です。
5月1日付のコメントでもご説明しましたが、円ショート筋と円ロング筋のどちらが余裕があり、どちらが損切りの危機に立たされているかは、火を見るより明らかな状況です。損切りにより一気に動きやすいのは円安ドル高進行ということです。
米国長期金利とドル円の相関ですが、2016年以降2017年終わりまでは、金利上昇=米ドル高、金利低下=米ドル安、という順相関の関係にありました。しかし年明け以降は、米国の減税政策や財政政策が悪いインフレ進行につながるのではないか、という懸念から米ドル下落、米国長期金利上昇(米国債券下落)という逆相関に変化していました。ところが、4月半ばから再び金利上昇=ドル高、という本来あるべき順相関に戻っています。ドルインデックスは年明け以降の下落分をすべて取り戻し、昨年12月半ばの水準まで戻しており、その時のドル円は112-113円台でした。昨年12月と現在を比較して、対ドルで1-2円の円高になっているわけですが、その明確な理由は見当たらず、外部環境がこのままでも、113円台まで上昇してもおかしくありません。
さらに、米国長期金利のこの先の動向ですが、米国経済は好調持続、原油価格も上昇基調継続という外部環境の中では、大幅に低下する要因は見当たらず、米国長期金利は緩やかな上昇が続くか、少なくとも高止まりの状況になる可能性が高く、ドル安要因にはなりそうにありません。また、アルゼンチンを初めとする経常収支赤字の新興国通貨下落も反転する要因はなく、米ドルへの資本逃避は今後も継続し米ドル需要を支えるでしょう。
もし原油価格が大きく下落した場合、ブラジルやロシアなどの経済に打撃を与え、世界的景気後退のリスクが意識されるような状況になれば、米国長期金利は低下しドル安要因になりますが、資本逃避による米ドル需要は増加するため、米ドルにとっては「綱引き」の状態になり、米ドルは堅調な状態(逃避資金による米ドル買い、米ドルによる米国債買い)が続きます。問題は、「リスクオフの円買い」のインパクトが米ドルへの需要を上回る場合、ドル円は下落しますので、リスクオフの程度次第でドル円の売却を検討すべきです。したがって、原油価格がピークアウトから下落トレンド入りしたと判断されるまでは、ドル円ポジションはキープでよい、ということになります。
米朝会談が行なわれず、再び米朝関係が緊迫化し、米国による北朝鮮攻撃もありえる、という状況に変わるリスクもありますが、それはあらかじめ想定できるリスクではないため、現段階では考える必要はないでしょう。いわば自然災害と同じ性質のリスクだからです。