ブラジル・リスクが拡大中
ブラジル・レアルの下落が止まりません。昨日も1.4%下落し、年初来安値を更新し、2016年3月以来の水準となっています。ブラジル・レアルの年初来の下落率は15.2%、1月24日に付けた今年の高値からの下落率は19.6%に達しています。ブラジル株(ボベスパ指数)も昨日3.0%の大幅下落となりました。
ブラジル・レアルの下落が続いている背景は、同様に通貨下落が続いているアルゼンチン、トルコなどと同じ経常収支赤字国であるということに加えて、国内で大規模ストライキが相次ぎ、政治的にも経済的にも混迷は深まっていく状況が明らかだからでしょう。すでに経済政策が行き詰まり、問題化しているベネズエラ、アルゼンチンとも国境を接しており、悪影響が伝播しやすい地理的条件です。
ブラジルの経済規模は、GDPが世界で8位、新興国の中では中国に次ぐ規模であり、世界17位のトルコや世界21位のアルゼンチンに比べるとはるかに大きく(ブラジルのGDPはアルゼンチンの約3倍)、ブラジル・レアルの下落が続き「通貨防衛とインフレ抑制のために利上げ→景気下押し→財政悪化→更なる通貨下落」という悪循環に入ってしまうと、いよいよ「南米通貨危機」に発展します。
そうなった場合、南米各国に与信の多いスペイン、ポルトガルの銀行問題に直結するのは確実であり、それは新たなユーロ圏の問題に発展するでしょう。世界経済にも様々なルートで当然悪影響を与えることになり、世界景気敏感銘柄を主導に世界的株式市場下落に繋がる可能性が高く、景気敏感業種比率が高い日本株は相対的に下落率が大きくなると思われます。
昨日発表された主体別売買動向では、外人投資家は久しぶりに日本株を大きく売りこしました。南米通貨危機発生リスクを少しずつ感じてきているのかもしれません。日本は南米から遠いため、対岸の火事とのんきに構えていて足元をすくわれる、ということが無いようにしたいところです。