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2018年7月25日のマーケット・コメント

日銀政策修正観測について-縮小方向への「修正」は事実上不可能

 

7月30、31日の日銀決定会合に向けて、にわかに日銀政策の修正観測が浮上しています。月曜日には長期金利急上昇を受けて、日銀は2月以来となる指し値オペを発動しましたが、10年国債利回りは現在でも0.07%と、急上昇前の0.04%を上回る水準での推移となっており、修正観測はくすぶり続けています。

 

2013年4月の開始以来すでに5年以上が経過している日銀の異次元緩和策ですが、ここでその変遷を振り返ってみます。異次元緩和の2大政策は、国債の買い入れと日本株指数連動型ETFの買い入れです。まず国債買い入れですが、2013年4月に年間60兆円の枠が設定され、2014年10月に年間80兆円に拡大、2016年9月には年間80兆円を目処としながらも10年国債金利を0%程度に固定することを目標とし、買い入れ額は結果的に決まるという現行の政策が始まりました。日銀からの正式発表は無いですが、0%程度とは-0.1%~0.1%を意味するということは市場では公然の事実です。

 

次にETF買い入れですが、2013年4月にそれまでの年間1兆円から年間3兆円に拡大され、2016年7月には更に年間6兆円に拡大されました。ETF買い入れは国債とは違い現在でもノルマ的に買い入れられており、買い入れ実績は2016年8-12月2兆6,935億円(年間6兆4,644億円ペース)、2017年5兆9,866億円、2018年1-6月3兆5,095億円(年間7兆190億円ペース)となっています。

 

つまり、これまでの修正は、2016年9月の金利操作開始以外は、すべて買い入れ拡大方向の修正でした。国債もETFも買い入れる一方なので、日銀の保有資産は増加し続けています。2018年6月末の保有残高は国債が428兆円、ETFが19兆円(時価ベースでは25兆円と推算)まで積み上がっており、この状態を放置すべきでなく修正すべきだという意見が出るのは当然でしょう。そこで修正の具体的方法を考えてみます。

 

国債買い入れの修正は、現在0%程度としている10年国債利回りの誘導目標を上方修正することが考えられます。利回りの上昇により、金融機関が国債運用での収益機会が生まれるという利点はあるものの、政府の利払い費用が増加するという難点もあります。何よりも、月曜日に実際に利回りが急上昇したことで明らかですが、10年国債利回りは-0.1%~0.1%の範囲内という国債市場の秩序を破壊して混乱を招くことになるため、日銀があえてそのリスクを犯す理由は見当たりません。

 

ETF買い入れの修正は、国債買い入れ同様に、ある基準を満たした時のみ買い入れを行い、結果的に目処とする年間6兆円よりも買い入れ額を少なくするということが考えられます。しかし、これまで一定の株価押し上げ効果となり市場に安心感を与えてきたETF買い入れが事実上減額されるとなれば、株式市場は間違いなく下落で反応するでしょう。株価下落は政府の望むところではなく、ましてや日銀の政策変更が原因での下落などということは受け入れられ難いでしょう。

 

つまり、日銀の買い入れ縮小方向の政策修正は事実上不可能で、現行の政策を継続するのか、大きな痛みは伴うが政策を大転換するのかしか選択肢は無いのです。安倍首相の自民党総裁3戦が有力視される中、当分「大転換」はなく「現状継続」となるでしょう。