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2018年8月13日のマーケット・コメント

トルコ・リラの急落で新興国通貨全面安

 

先週の金曜日にトルコ・リラが10%を越える急落となったことを受け、新興国通貨は全面安となっています。以下主要新興国通貨の8月10日と今年年初来の下落率です。

トルコ・リラ:8月10日-13.6%、年初来(8月10日まで)-40.8%

ブラジル・レアル:-1.6%、-14.3%

南アフリカ・ランド:-2.7%、-12.1%

インドネシア・ルピア:-0.4%、-6.4%

インド・ルピー:-0.2%、-7.2%

以上は以前、経常収支赤字の比較的経済規模の高い国で、脆弱5通貨と呼ばれた通過。以下はその他の主要新興国通貨。

アルゼンチン・ペソ:-3.8%、-36.3%

ロシア・ルーブル:-1.6%、-14.8%

中国・人民元:-0.4%、-5.0%

 

なお本日それらの通貨は更に下落しており、8月13日13時現在で前日比で以下の下落となっています。

トルコ・リラ:-7.6%

インドネシア・ルピア:-0.9%

インド・ルピー:-1.0%

ロシア・ルーブル:-2.2%

中国・人民元:-0.4%

 

以前からご説明しておりますように、通貨の大幅下落は以下の2つの悪影響を引き起こします。

1.「通貨大幅下落」→「輸入物価高騰によるインフレ加速」→「通貨防衛とインフレ抑制のために政策金利を大幅引き上げ」→「引き締め的金融政策により経済活動悪化」

2.「通貨大幅下落」=「ドル建て債務の残高膨張」→「財政懸念の高まり」→「更なる通貨下落」

特に、外貨準備が少ない国の場合(今回で言うとトルコやアルゼンチン)、通貨防衛のために為替介入を行なう原資がないということになり、事態は深刻です。

 

この動きを受けて、日本市場では全面的な「リスク・オフ」となっており、日本株下落、ドル円下落、債券上昇となっています。

 

今回のような国家の構造的問題から来る悪材料は、織り込みが進むのに時間がかかり、何らかの政治的アクションにより何度も小康状態になり、市場は反発します。しかし、根本的な解決が図られることはなく、時間経過とともに何度も悪材料として浮上します。日本株を含めて世界株は、まだ一気呵成に下落が加速する、という状態にまではなっていないと判断され、リバウンドはあるでしょう。しかし、それはあくまでもリバウンドに過ぎない、ということを決して忘れてはなりません。また、少なくとも7月安値(日経平均21,500円水準)を割らないことが確認されるまでは様子見が正解でしょう。リバウンド取りの鉄則は「順張り」であり、値ごろ感から逆張りを行なうのは大変危険です。

 

ドル円に対する「110円トライ近辺から買い下がり」というスタンスに変更はありません。日銀は相当長期間にわたり現状の政策を継続することを表明しており、ファンダメンタルズから円を買う材料はありません。事態が深刻化して、FRBの年内の利上げが困難な状況にならない限り、それは変わりません。実際に最近のドル円の動きを見ても、リスクオフ=円買い、という反応は限定的になってきており、ドル高圧力が円高圧力に勝る状況を続くと思われます。