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2018年8月15日のマーケット・コメント

トルコ危機は対岸の火事かもしれないが・・・

 

トルコ・リラの不安定な状態が続いています。13日に最安値7.13M(1米ドル=7,130,000トルコ・リラ)をつけた後、6.5M-7.0Mの間を乱高下した後、14日にトルコ中央銀行が、銀行の支払い準備率の引き下げなどを発表し「必要なあらゆる措置を取る」と表明したことを受けて、6.4Mまで反発し小康状態となっていました。しかし現在また6.5M近辺まで売られてきています。

 

前回のコメントでもご説明しましたが、トルコ・リラが売られている根本的な原因は「経常収支赤字」「多量の対外債務」「十分ではない外貨準備高」であり、金融政策ではどうにもならない要因です。更に加えて「政権の米国との対立」という要因が加わっており、米国による経済制裁強化も懸念材料です。

 

6月24日の選挙で再選を果たしたエルドアン大統領は、政治的な権限だけでなく、司法制度や金融政策にも介入できる権限を持つ「独裁者」となりました。今も昔も共通ですが、独裁者は常に強気を貫き通さなくては独裁者ではいられなくなります。米国との対立を深めているエルドアン大統領も同様で、米国に屈することは許されない立場です。米国がトルコになびく理由もなく、トルコ情勢は混乱を深めていき、トルコ経済が破綻状態になるまでトルコ・リラも下落が続くでしょう。トルコに対する融資が多いのはスペインの銀行であり、スペイン発で再び欧州銀行問題に発展する懸念もあります。

 

トルコ問題から日本が受ける直接的悪影響は、現地に生産拠点を持つトヨタ(7203)、ホンダ(7267)、三菱電機(6503)などの企業に限られますので、日本にとっては「対岸の火事」と位置づけられてもいいでしょう。しかし「世界的な新興国通貨下落」「米国との対立」という軸で浮上する世界最大の国が、日本にとって「対岸」どころか多くの製造業にとって「一心同体」といってもいい中国です。中国株も下落基調が続いており、上海総合指数は2016年の安値2,638.30まであと100ポイントという水準まで下落しています。中国・人民元も防衛ラインと見られる6.9元を下回る水準まで下落しています。

 

中国経済への悪影響が本格的に顕在化してきたら、日本株は主要株式市場の中で最も下落率が高くなると想定されます。反対に、中国を含めて今回の新興国危機から最も悪影響を受けにくいのが米国株で、主要市場の中で最も堅調な展開が想定されます。もし中長期的運用で株のエクスポージャーを持つのであれば、日本株ではなく米国株にすべきでしょう。