整合性の取れない市場動向は何を示唆するのか?
昨日米国では、24日ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演内容が、漸進的利上げ姿勢を維持する、というものになることを織り込み、為替市場ではドル全面高となり、ドル円は111円台回復となりました。ドル上昇にもかかわらず、債券はほぼ横ばいで米国10年国債利回りは2.83%と前日比0.01%上昇に留まりました。為替と債券の動向に整合性が取れていない状況です。
本日の日本株は、昨日の米国株が小幅下落で、本日の中国株も小幅下落となっているにもかかわらず、上昇しています。ドル円の上昇を受けての上昇、としか説明できませんが、日本株の内容は昨日ほどではないにせよ、方向性としてはディフェンシブ・シフトであり、これも整合性が取れません。この整合性のなさは、年金資金やマクロ系の大型ヘッジファンドなどの複数市場にまたがって活動する投資家は動いておらず、もっぱら単独市場で活動する短期投資家のみが動いている、ということを示唆している可能性が高いと思われます。
本日のジャクソンホール、現在査収交渉中のNAFTAの行方、小康状態だが予断は許さない新興国通貨下落問題、米中貿易戦争の行方など、政治的およびマクロ的な不透明要素が多すぎて、大型投資家が動いてトレンド形成するような状況ではない、ということなのでしょう。だとすれば、各市場ともに直近のレンジを抜けるような値動きにはならない、と考えられ、ドル円はもう一段上昇したらドルロングの解消、日本株は現状水準では慎重姿勢でもう一段上昇したらトレーディングでカラ売り、という姿勢で臨むべきだと考えます。
ところで昨日発表された主体別売買動向によると、外人投資家は先週現物・先物合計で6,710億円の売り越し(現物3,450億円の売り越し、先物3,260億円の売り越し)と、大幅な売り越しとなりました。3週連続の売り越しで、3週間合計の売り越し額は合計で約1兆2,000億円(現物のみだと約4,470億円)となります。一方で「ステルス減額」を始めた可能性が高い日銀のETF買い入れですが、8月の出動基準である「前場引けでのTOPIXの下落率が0.4%程度以上」を過去1年に当てはめると、買い入れ額は約4兆円となっていたため、2兆円程度の事実上の減額の可能性があります。外人投資家の売りを日銀のETF買いで相殺してきた、という日本株の構図が崩れる可能性がある、ということで、日本株の上値を抑える大きな要因です。