パウエルFRB議長の講演&各株価指数の値動きの違いの背景
24日米国ジャクソンホールで、注目のパウエルFRB議長の講演がありました。大方の予想通り、これまで同様「漸進的利上げを継続する」という内容でしたが、注目されるのは「利上げは中立金利に達するまで継続する」と示唆したことです。これは言葉を変えれば「中立金利に達すれば利上げを停止する」ということになります。6月のFOMCの際に示されたドット・チャートによると、FOMC参加者の予想中立金利の平均値は3%程度です。
FFレートの現在の誘導目標は1.75-2.00%ですので、0.25%の利上げをあと4回行なえば2.75-3.00%と、予想平均中立金利に達します。これはFOMC参加者が、年内あと2回、来年2回と予想する利上げ回数と整合的であり、参加者の多数がパウエル議長の考え方に賛同していることを表しています。
この講演内容を受けて、金曜日の米国市場は「適温相場」的な反応になりました。すなわち、米国株上昇、米国債券小幅上昇、新興国通貨小幅反発(米ドル小幅下落)でした。ドル円も小幅下落となりました。米国株は金曜日の上昇により、NASDAQ(6月5日高値更新)に続き、S&P500も年初来高値更新となりました。NYダウは金曜日終値25,790.35と、1月26日の年初来高値26,616.71まで、まだあと3.2%の上昇が必要です。
米国の上記3つの株価指数の値動きの違いの背景は、単純明快です。現在市場参加者が感じている最大のリスク要因は、新興国通貨下落による新興各国の経済減速と米中貿易戦争による中国経済の減速です。それらから業績に悪影響を受ける、いわゆる世界景気敏感業種の株価の値動きが悪く、悪影響を受けにくいインターネット関連業種などの株価の値動きがよい状況が続いていることがその背景です。言い換えれば、グロース株がバリュー株に対して優位な相場が続いている、ということです。
ご存知の様に日本株の業種構成は、NYダウよりも海外景気敏感業種の構成比率が高いため、NYダウ以上に値動きが悪くて当然です。今日の前場引け時点で、日経平均は1月23日の年初来高値24,129.34円まであと6.0%、TOPIXは1月23日の年初来高値1,911.31まであと10.9%の上昇が必要な水準にありますが、上述のような背景がある以上、米国株に対して出遅れるのは当然であり、また「世界景気敏感業種=その多くがバリュー株」ですので、日本株全体のバリュエーションが米国株全体よりも低くて当然なのです。
金曜日の米国株の上昇を受けて、本日の日本株は景気敏感業種主導で上昇していますが、新興各国や中国の景気減速リスクが解消されたわけではないため、この形(景気敏感業種主導)での上昇は持続しないと思われます。もしそれら銘柄の買い持ちがあれば、絶好の戻り売り機会でしょう。日経平均も5月、6月、7月と3回跳ね返された「23,000円の壁」を、今回も抜くことはできないでしょう。
ドル円は午前11時過ぎに、何の材料もなく111円割れまで急落しましたが、先週末発表された8月21日時点のシカゴ筋ポジション(非商業ベース)を見ると、円ショートは8月14日時点の107,737枚から101,522枚へ減少、円ロングが49,369枚から54,116枚へ増加し、その結果ネット円ショートは58,368枚から47,406枚へ大幅減少となりました。ドル円急落のエネルギーは着実な放出が続いており、「最大限の安値を108円近辺と見て110円近辺から買い下がり」という姿勢を継続します。ただ、目先112円を大きく越えて上昇する可能性も低いと思われるため、こまめな利食いをお勧めします。