今回も「日経平均23,000円の壁」は重いか
昨日、米国とメキシコとの間の貿易協定が妥結したことを受けて、米国株が上昇し、日本株は昨日に続き景気敏感株主導での上昇となっています。日経平均は寄り付き直後に一時23,000円台をつけましたが、23,000円台定着とはいかず、押し戻される形となっています。この日経平均23,000円は、5月、6月、7月と3回チャレンジしていずれも抜けなかった「壁」となっており、チャート上重要なフシメとなっています。
今月は月半ばのトルコ・リラ急落で下落した後、トルコ・リラを始め新興国通貨下落が小康状態となり、ジャクソンホールでのパウエルFRB議長により利上げのゴールが示唆され、さらに米国とメキシコの貿易協定妥結で4回目の23,000円の壁をトライする水準まで上昇してきました。しかし、今回もこれまでと同様に「23,000円の壁」を上抜くのは難しそうです。
その最大の理由は、目先これ以上の好材料が見当たらないことです。米国とメキシコの間での貿易協定が妥結したことで、米国と日本の間、米国と欧州の間の貿易協定の早期妥結期待が出てきたかもしれませんが、経済規模を考えるとメキシコよりもそれらはあるかに複雑であり、早期に妥結するとは思えません。自民党総裁選挙も安倍3選は規定路線でしょう。
一方で潜在的なリスク要因としては以下が挙げられます。
1.新興国通貨下落問題の再燃
昨日からトルコ市場が休日明けしましたが、トルコ・リラ相場は不安定な動きとなっています。経常収支赤字、多額の対外債務、通貨下落による高いインフレ圧力など、トルコ・リラだけでなく南アフリカ・ランド、ブラジル・レアルなどの脆弱通貨が抱える根本的な問題は、何も解決していない状態で、新興国通貨下落問題はいつ再燃してもおかしくありません。
2.中国経済減速の一層の顕在化
米国による制裁関税第1弾が発動されたのは7月6日で、その実体経済への悪影響が8月分の経済統計(9月発表)から顕在化し、更に第2段の発動が8月23日だったことから、悪影響顕在化は9月分統計では更に強まる可能性が高いでしょう。中国株および中国元は政府系資金による買い支えで下落は止まっているものの、反発するような状況ではありません。中国政府にとっては中国株よりも中国元の買い支えの方が優先順位は高いと思われ、中国株はいずれ2016年の安値を更新すると思われます。
3.米国による合計2,000億ドルの制裁関税第3弾の具体化
米国は制裁関税第3弾として、合計2,000億ドルの中国製品に対する関税発動を表明しており、9月6日にはパブリック・コメント(民間からの意見聴取)が締め切られます。第1弾と第2弾のスケジュール感を踏襲すると、9月終わりごろには関税対照最終リストと発動日程が発表されます。第2弾の160億ドルまでは市場に織り込み済みでしたが、2,000億ドルの実行は市場には織り込まれていないでしょう。当然、それは中国経済への更なる大きな打撃になります。
日本株の先週半ばからの反発局面でも、売買代金は低調であり、買い戻し主導の可能性が高いと思われます。基調としての外人投資家の日本株売り越し姿勢に変化はないと思われ、買い上がる主体が見当たらない、という点も「23,000円の壁」を今回も抜けそうにない理由になるでしょう。