トルコ・リラ&日本株-典型的な買い戻し相場
昨日トルコ中銀は、政策金利を17.75%から事前予想の21.00%を大きく上回る24.00%に引き上げることを決定しました。エルドアン大統領の「利上げをしない」という公約は、ついにトルコ・リラ防衛とインフレ圧力沈静化のために反故となり、状況次第で今後も引き締め姿勢を強めていくと思われます。この予想以上の大幅利上げを受けて、トルコ・リラは急騰しましたが、8月後半にもみ合っていた水準に戻ったに過ぎません。
大統領選挙前の6月7日に、トルコ中銀が最後に政策金利を引き上げたときの実質短期金利(政策金利-インフレ率)は5.5%程度でした。9月5日付のコメントでご説明したように、8月のインフレ率(消費者物価指数)は17.9%で、実質金利が5.5%程度になるためには23.5%までの利上げが必要でした。先行きのインフレ率を示唆する生産者物価指数(PPI)は、8月は32.1%まで上昇しており、9月のインフレ率が更に大幅に上昇するのは確実です。そのことを踏まえると、今回のトルコの利上げは「中銀は正しい措置を講じたが、大統領の圧力の生で後手に回った」と評価できます。
そもそもトルコ・リラをはじめとする脆弱通貨の問題は、「経常収支赤字」&「多額の対外債務」であり、利上げでは根本的解決には繋がりません。むしろ利上げは、一時的な通貨防衛の手段にはなっても、金利上昇により経済活動に下押し圧力をかける、メリットは短期でデメリットは長期、という小手先の対応です。利上げだけでは何も解決しないということは、政策金利を60%まで引き上げたアルゼンチンが、なんら問題の解決が見えないことで明らかでしょう。
さて日本株ですが、本日は続伸の動きとなり「日経平均23,000円の壁」に挑戦する動きとなっています。注目すべきは昨日までと内容がまったく異なる、ということです。本日は直近に株価下落が大きかった銘柄ほど上昇している、いわゆる典型的なリターン・リバーサル相場となっています。直近に株価が大きく下落した銘柄の多くが、中国関連を中心とする景気敏感業種でしたので、本日はそれらの銘柄が大きく買われています。
何かこれまでの懸念が払拭されるようなことが起きたのでしょうか?そうではないことを本日も中国株はまったく上昇していないことを見ればわかるでしょう。トルコ・リラの急騰や他の新興国通貨の反発、本日の日本株ともに、買い手は明らかに短期投資家の買い戻しです。昨日引け後に発表された主体別売買動向を見ると、先週1週間で外人投資家は現物を5,280億円、先物を3,578億円と合計で8,858億円もの売り越しだったので、買い戻しが入ってもまったくおかしくない状況だったと言えます。
重要なことは、短期投資家の買い戻しは短期間で終了する、ということです。脆弱通貨にしても、日本株を取り巻く懸念要因にしても、ファンダメンタルズ的に好転した要素はなく、買い戻しが終われば本来のファンダメンタルズに沿った動きに戻るでしょう。日本株は今日が当面の高値の可能性が高く、
1.日経平均はトレーディング・セル
2.中国関連銘柄を中心に景気敏感株は売り姿勢
3.脆弱新興国通貨は売り姿勢
という従来からのスタンスを確認します。