米国10年国債利回りは3%を越えて上昇だが他市場に影響せずの背景
米国長期国債利回りの上昇が続いています。米国10年国債利回りは、一昨日に0.06%上昇し3.05%とフシメである3%を明確に上回り、昨日も小幅上昇し3.06%(物価連動債利回り0.92%、BEI率2.14%)となっています。8月末は2.86%(物価連動債利回り0.77%、BEI率2.09%)でしたから、今月になって0.20%上昇しました。0.20%上昇の内訳は、物価連動債利回りが0.15%上昇、BEI率が0.05%上昇です。ただ、前回5月に3%を明確に上回った時と違い、今回は米国株式市場や新興国通貨市場など、他の市場に影響は見られません。
10年物価連動債利回りとBEI率それぞれの推移を振り返ると、2013年半ば以降、物価連動債利回りの上限は0.9%程度、BEI率の上限は2.2%程度でした。つまり現在の水準は、物価連動債利回りは上限だが上限を明確に越えてはいない、BEI率は上限までまだ少し余裕がある、という状態です。米国10年国債は今年再びフシメの3%を明確に上回ってきたが、物価連動債利回りもBEI率も過去5年間の上限を明確に上回ってはいないので、動揺する必要はないと判断している、と考えられます。
以前からご説明しておりますように、物価連動債利回りはFRBの金融政策姿勢と相関し、BEI率は期待インフレ率をあらわします。現在の市場が織り込んでいるFRBの金融政策は、9月26日FOMCでは確実に利上げがあり、12月19日FOMCでも3分の2の確率で利上げ、来年の利上げ回数は2回、だと思われます。9月26日FOMCを受けても、現在の織り込み以上の利上げ加速を市場が織り込むとは思えず、物価連動債利回りは上限を明確に越えて上昇することは想定できません。
一方BEI率(期待インフレ率)ですが、米国のインフレ圧力は落ち着いており、こちらも上限を明確に越えて上昇することはなく、その結果として当面は米国10年国債利回りが更に一段と上昇するとは思えません。ただし、すでに発動されている500億ドルに加え9月24日に発動される2,000億ドルの中国製品に対する制裁関税の影響により、コストプッシュ(輸入物価上昇)型のインフレ圧力が高まる可能性があることには留意すべきでしょう。