米国の対中貿易赤字減らず-2,000億ドル追加の可能性高まる
昨日発表された7月の米国貿易統計ですが、対中輸出は約110億ドル(前月比8.2%減)、対中輸入は約451億ドル(前月比1.6%増)で、米国の対中貿易赤字は約341億ドル(前月比5.2%増)となりました。7月6日に合計340億ドルの米国による制裁関税、中国による報復関税が発動されましたが、それを受けても米国の対中貿易赤字は縮小するどころか拡大したことで、トランプ政権が現在検討中の合計2,000億ドルの制裁関税第3弾の発動の可能性は高まったと言えます。
合計2,000億ドルの制裁関税第3弾に関しては、本日9月6日にパブリック・コメント(民間からの意見)募集が締め切られます。これまでのスケジュール感から、数週間後に関税対象の最終リストと発動日の日程が発表され、発動日はその2-3週間後と予想されます。11月6日には米国で中間選挙が予定されており、その選挙戦でトランプ政権は共和党陣営に政権の対中貿易政策を話題にしてもらいたい、と考えているでしょうから、9月中にも最終リスト発表で発動日を10月初めとしてくる可能性が高いと思います。
2,000億ドルの発動に関しては、市場に織り込まれているとは思えず、中国経済に大きな打撃となることによる企業業績への悪影響懸念から、日本を始めとする業績の中国依存度が高い株式市場は下落が予想されます。逆に、米国経済が受ける悪影響は最も軽微になることから、米国株の下落は限定的でしょう。
市場とは関係ありませんが、今後話題になりやすい米国中間選挙とはどういうものかについて簡単にご説明します。米国の議会は上院と下院があり、議員定数は上院が100人、下院が435人、議員任期は上院が6年、下院が2年です。つまり、2年に1回、上院の3分の1、下院の全議席が改選され選挙が行なわれます。このうち、大統領の任期は4年で、議員選挙と2回のうち1回は大統領選挙と同じ年に行なわれます(直近では2016年)。例えば今年のように、大統領選挙と重ならない年の議員選挙を中間選挙と呼びます。
開戦前の現在の上下院の勢力状況ですが、上院は共和党51議席、民主党49議席(うち2議席は無所属)、下院は共和党239議席、民主党194議席となっています。下院で共和党が過半数を取れない可能性はまずないことから、今回の注目点は上院での過半数です。もし民主党が過半数を取れば、いわゆる「ねじれ国会」となり、法案通過に支障をきたし政権運営がスムースに行かなくなるからです。今回改選対象となる上院33議席の内訳は、共和党8議席(うち3人は引退を表明)民主党25議席(うち1人は引退表明)です。米国の議員選挙は現役議員の再選率が非常に高く、共和党3議席民主党1議席の合計4議席の新人枠の取り合い次第で、共和党が過半数を取れない可能性は低くはない状況です。そのような状況をトランプ政権も十分理解しているだけに、共和党陣営の選挙戦に弾みをつけるために2,000億ドルの制裁関税第3弾発動の可能性は高い、と判断されるのです。