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2019年1月31日のマーケット・コメント

1月FOMC終了-あまりにも臨機応変

 

昨日米国でFOMCが終了し、事前予想通り利上げは見送られました。市場の注目点は、将来の利上げスタンスに関してどれ程ハト派シフト(金融引き締めに消極化)するのかと、FRBのバランスシート削減に関するコメントでした。将来の利上げスタンスに関しては、前回まで使われていた「漸進的な利上げ」という文言が削除され「(将来の金利変更には)辛抱強くなる」とされました。またバランスシート削減に関しては、以前は「自動操縦」とされていましたが、今回は「経済・金融動向を考慮しながら柔軟に対応する」とされました。

 

振り返ると、利上げを決めた9月会合では「(利上げを停止する)中立金利まではまだ長い道のりがある」とし、景況感悪化の中での利上げ継続を嫌気して米国株は10月に大幅下落しました。11月の講演で「現状の金利水準は中立金利をわずかに下回る水準」と発言し利上げ姿勢のトーンダウンを図るも、昨年4回目の利上げを決めた12月会合では「政策金利を漸進的に更に幾分か引き上げる」とされ、再び市場は利上げ継続姿勢を嫌気して米国株は大幅下落しました。

 

年が明けてから、FRBのハト派シフト表明が始まりました。アップルの売り上げ見通し下方修正を受けて米国株が大幅下落した1月3日の翌日の講演で、パウエルFRB議長は「将来の利上げは状況に応じて柔軟に対応する」と発言し、それを受けて米国株は大幅上昇。その後も複数のFRB高官から、利上げ継続に慎重な見解が示され、米国株は上昇基調が続きました。そして今回のFOMCでFRBのハト派シフトが、いわば正式表明され、米国株は大幅上昇で反応しました。

 

以前からFRBは「金融政策変更はデータ次第」としてきましたが、主要経済指標に大きな変化がない中での年明け以降のハト派シフトを見ると、米国株の動向が「データ」に含まれることが明らかです。歴代のFRB議長と違い、経済学者出身ではなく実業家出身のパウエル議長は、理論ではなく市場動向という現実に臨機応変に対応する、と現時点では高評価が与えられるでしょう。

 

ただ、株価は本来、金融政策や景気動向の影響による業績先行き見通しによって決まります。業績動向は、中国景気の減速などから、従来見通しよりも下方修正が相次いでいる状況です。業績悪化により本来なら下落するはずの株価が、FRBが金融政策の柔軟化により当面下支えされているとしても、その効果が限界に達した時の大幅下落が懸念されます。

 

そもそもFRBは将来の金融政策を上手に示唆することにより、市場との対話を行なってきた歴史がありますが、あまりにもあからさまにFRBが市場動向に影響を受けたとの評価になれば、FRBの政策一貫性に対する市場からの信認の失墜にも繋がりかねません。市場との対話ではなく、市場に振り回されるとの評価になった場合、それはまさに本末転倒であり市場は拠り所を失い混乱するでしょう。

 

今月中、米国株を支えた「FRBのハト派シフト」は昨日のFOMC声明で仕上がりとなり、2月は再び景況感悪化による業績懸念に注目され、株式市場は調整局面入りする可能性が高いと思われます。