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2019年10月15日のマーケット・コメント

米中部分合意-本質的変化ではない

 

先週末に、中国が米国の農産物を大量購入すること、それに対して米国は10月15日から予定されていた、合計2,500億ドルの中国製品に対する関税率を25%から30%への引き上げを見送ることが合意され、「米中部分合意」と伝えられました。これを受けて先週金曜日の米国市場では、株上昇、債券下落(金利上昇)となりました。ただ以下の点で今回の「部分合意」により、米国による中国攻撃になんら本質的変化はありません。

 

1.中国は豚肉を大量輸入して中国国内の豚肉不足を解消する必要があった。

豚コレラの感染の広がりを受けて、中国国内は深刻な豚肉不足に陥っており、豚肉価格が高騰しています。中国において豚肉は食卓に欠かせない食材で、中国政府は豚肉を大量輸入する必要がありました。今回「合意」されたとする、米国からの豚肉と大豆(主な用途は豚向けの飼料)の大量購入は、必要なものを買うにすぎず、譲歩の要素はまったくありません。

 

2.トランプ大統領は来年の大統領選挙に向けて政治成果が欲しかった。

民主党による弾劾調査開始などにより苦境に立たされているトランプ大統領は、来年の大統領選挙に向けて自身の支持基盤にアピールできる政治成果が必要でした。今回の「合意」によりトランプ大統領は「自分のおかげで中国に大量の米国産農産物を買わせることが出来た」とアピールできます。また、25%から30%への関税率の引き上げ見送りは、何も譲歩の要素はなく、それが将来使えるカードとして温存できることになったにすぎません。

 

つまり今回「部分合意」とされている内容には、中国側にも米国側にも一切譲歩の要素は無く、お互いの利害が一致した内容にすぎません。なお中国の報道では「合意」という表現は一切使われていません。

 

昨日の米国市場では、今回の「部分合意」が見せかけにすぎず、本質的な変化は何もないということで、株小幅下落、債券小幅上昇(金利小幅低下)となりました。しかし本日の日本株は大幅上昇となっています。ただ、個別銘柄の動きに特徴は無く、完全に先物主導です。水準としても9月高値と同水準まで上昇しており、当面想定されるボックス圏(21,000-22,250円)の上限です。今日で短期投資家の先物買い戻しは一巡すると考えられ、売り姿勢で臨むべきでしょう。7-9月期企業業績発表は、日本では本格化するのは10月23日以降ですが、米国では今週から本格化します。米国発で業績懸念による株式市場調整が、今週から始まる可能性もあるでしょう。