中国経済成長の減速継続確認&買い戻しの進捗状況を見る数値
本日いくつかの中国経済指標が発表されました。10月の工業生産は事前予想の5.4%増を下回る4.7%、10月の小売売り上げも事前予想の7.8%増を下回る7.2%増でした。また、1-10月の都市部固定資産投資は事前予想の5.4%増を下回る5.2%増で、データがある1998年以降で最も低い伸びとなりました。米国による制裁関税の悪影響による中国経済成長の減速継続には、あらためての驚きはありませんが、その減速のスピードが予想以上であることが示された形です。
昨日のコメントで
「下落のきっかけとなる悪材料が出れば、今度は下落波動の始まりとなりますが、それまでは高値圏でのもみ合いとなりそうです。」
とご説明しました。今日の中国経済指標の発表と、香港株が続落していることを受け、日本株は下落していますが、それらが下落波動が始まるきっかけとなるには力不足だと思われ、今日の下落はまだもみ合いの範囲内での下落だと考えます。
その「きっかけ」となる可能性が最も高いのは、やはり米中貿易協議の行方でしょう。結局合意に至らなかったとなれば当然それは悪材料です。そうはならないとしても、米中合意に対する市場の期待値は相当高まっていると考えられるため、部分合意の内容としてすでに報道されている「中国が米国産の農産品を大量購入する見返りとして、米国が合計2,500億ドルの中国製品に対する関税率の25%から30%への引き上げを見送る」という内容になったとしても、それは材料出尽くしで悪材料視される可能性が高いと思われます。
市場が注目する点は「12月15日から予定されている合計1,900億ドル(9月1日に10%の関税が発動予定だった3,000億ドルのうち年末商戦に配慮して延期されている分)に対する関税発動の延期があるかどうか」でしょう。
さて、昨日で日本の7-0月期企業業績発表はほぼ終了しました。景気敏感銘柄の業績に対する市場の事前織り込みは「7-9月実績は悪いが、下期以降は業績回復基調に転じる」というものだったと思われますが、実際は「7-9月実績は思っていた以上に悪く、下期も上期比横ばい」という内容が示されました。10月半ば以降の株価上昇は、業績の裏づけがなく買い戻し主導だった、という認識が必要です。
カラ売りの買い戻しがどの程度進んだかを見る数値として、11月6日付のコメントで「カラ売り比率」をご説明しました。その後もカラ売り比率は40%強の水準での推移となっており、買い戻しのピークアウトを示唆しています。今回は9月2日付のコメントで話題にした「裁定売り残」の推移に注目します。裁定売り残は、8月に先物主導で売りが入った結果「先物買い&現物売り」という裁定売り残が9月6日時点で1兆6,945億円まで積み上がりました。その後、先物主導で買いが入り続けた結果、11月8日時点では4,097億円まで減少しています。「裁定売り残の買い戻し」のエネルギーは大きく減少したということであり、この点からも買い戻しのピークアウトが示唆されています。なお、3市場合計の信用残高は9月以降ずっと、買い残は2兆円強、売り残は1兆円弱での推移となっており、示唆されることはありません。