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2019年11月20日のマーケット・コメント

「香港人権法案」米上院で可決-中国の反応に注目

 

昨日米上院で「香港人権法案」が全会一致で可決されました。上下院ともに全会一致での可決となり、トランプ大統領は拒否権行使することなく署名せざるを得ないでしょう。今後の注目点は中国政府の反応です。中国政府は10月15日に同法案が下院で可決されたあとに「強烈な憤慨と断固反対」「断固とした対抗策を講じて自身の主権を擁護する」と表明していました。法案成立が確実になり、中国政府の反応は言葉による警告に留まらない可能性が高いでしょう。米中関係は悪化の方向です。

 

一方、米中両国が部分合意を目指して協議を行なっている米中貿易交渉ですが、昨日あった報道では「中国は5月以降に発動した関税の即時撤回を求めている」とのことでした。米国による対中制裁関税の変遷は以下になります。

1.340億ドルに対する25%の関税(昨年7月6日発動)年間税額85億ドル

2.160億ドルに対する25%の関税(昨年8月23日発動)同40億ドル

3.2,000億ドルに対する10%の関税(昨年9月24日発動)同200億ドル

4.2,000億ドルに対する関税率を10%から25%に引き上げ(5月10日発動)同300億ドル

5.3,000億ドルのうち1,400億ドルに対して15%の関税(9月1日発動)同210億ドル

6.3,000億ドルのうち1,600億ドルに対して15%の関税(12月15日発動予定)同240億ドル

以上の年間税額合計は1,075億ドルです。

 

5月以降に発動された関税とは、4.5.6.になりますが、その税額合計は750億ドルで全体の70%になります。部分合意には知的財産権問題などは含まれず、米国産農産物の大量購入のみの見込みであることを考えると、全体の70%の関税撤廃はどう考えても過大です。関税撤廃対象が6.のみだとすれば全体の22%、5.と6.だとすると全体の42%です。トランプ大統領は「部分合意成立」を自らの政治成果としたいところでしょうが、米国側から見て妥当な主張は「6.のみ」でしょう。

 

中国側からすれば、国内で不足している豚肉と大豆を購入することは、米中部分合意と関係なく必要なことであり、それと引き換えに制裁関税の部分撤廃が得られればラッキーという立場です。つまりなんとかして「部分合意成立」が欲しいトランプ大統領の意向を利用して「5月以降のすべての関税撤廃」という過大な要求を吹っかけ、「6.のみ」が「5.と6.」になることを狙っていると思われます。

 

ただ今回の「香港人権法案」成立確実となったことで、中国政府は対米強硬姿勢を取る必要が生じていると考えられるため、トランプ大統領が欲しがっている部分合意という「政治成果」を与えず(部分合意には至らず)、単に商取引として、必要な豚肉と大豆を購入する、とする可能性が出てきたと言えます。