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2019年11月25日のマーケット・コメント

日本株は元のもみ合いに回帰-「香港人権法案成立」と「貿易交渉部分合意」の両立は可能なのか?

 

「香港人権法案」の下院通過を受けて、先週木曜日に下抜けする動きになった日本株ですが、その後の米国市場で法案通過が材料視されなかったことを受け、日本株は完全に戻り、日経平均は元の23,000-23,500円というレンジのもみ合いに回帰したと見られます。法案通過が材料視されなかったことに加え、連日のように米中両側から「第1弾の合意は近い」という報道がされていることも、株価の下支え要因になっています。

 

「香港人権法案」の成立は確実なので、問題は法案成立と米中部分合意の両立がありえるか、です。(大統領が署名すれば法案成立。署名せずに拒否権発動期限を迎えても法案成立。拒否権発動でも上下院で3分の2以上の賛成で法案成立。)トランプ政権にとっては、両立には何の問題もありませんが、問題は中国側です。あからさまな内政干渉である同法案について、中国は法案成立に対して報復策を講じる、と表明していますので、「法案成立」と「部分合意」を両立させることを前提に、中国側が取る行動のシナリオは以下の通りです。

1.法案成立前に部分合意し、両首脳が合意文書に署名する。

2.法案成立しても、部分合意、合意文書に署名までは具体的な報復措置を表明しない。

3.法案成立しても、貿易問題と人権問題は別の問題として、貿易問題では部分合意を目指し、人権問題では何らかの報復措置を表明する。

 

署名の期限が12月2日であることを考えると、1.はあまりにも時間がありませんので、現実的ではありません。2.だとすると習主席にとっては、内政干渉の法案を成立させた国のトップ(トランプ大統領)と笑顔で会談し合意文書に署名する、ということになり、面子を重んじる中国の国内からの反発を招く恐れがあるでしょう。おそらく現在の市場が期待しているのは3.のシナリオだと思われます。法案成立に対して中国は自らのメンツを守るために、人権分野での報復措置を表明してくるが、それは経済的には実害がほとんどなく、貿易合意と矛盾しないものになる、という織り込みです。

 

しかしそのような、体裁は美しいが中身がない報復措置、とはなんなのでしょうか?習主席にとって「部分合意獲得」という政治成果が欲しいはずですが、そのために米国に譲歩したという印象を与えるのは、自らの政治家生命をもリスクにさらす、ということは理解しているはずです。それを踏まえると私の結論としては、今後も米中ともに合意は近いとの発言を限界まで繰り返すものの、「香港人権法案成立」と「貿易交渉部分合意」の両立は不可能、というものです。後に、11月21日前場の日本株の反応は正しかった、となるでしょう。