日本株の裁定売り残はほぼ解消-買い戻しによる上昇エネルギーは消失
毎週水曜日の引け後に、前週末時点の裁定残高を東証が発表しています。裁定取引とは、先物と現物の価格差が歪んだ瞬間を捉えてポジションを取り、価格差が適正値に戻った時にポジションを解消して収益を出す、という取引です。その裁定取引に関わる現物株のポジション残高が、裁定残高です。
裁定残高は差し引きで買い超のことが多いのですが、直近の推移を振り返ると、6月14日に差し引き1,540億円の売り超に転じて以来、売り残は増加傾向が続き、特に8月に入って大幅増加し、9月6日には1兆6,945億円に達しました。この背景には、外人投資家による先物売りが継続し、先物が現物に対して割安になり、裁定業者が「先物買い&現物売り」という裁定ポジションを取る機会が多くあったことです。
9月6日をピークに裁定売り残は減少傾向が続き、9月27日には1兆1,514億円、10月25日には7,958億円、11月29日には1,469億円、直近の12月13日には403億円とほぼゼロ近くまで減少しました。この背景は、外人投資家が先物を買い戻す動きが続き、先物が現物に対して割高になり、裁定業者が「先物買い&現物売り」というポジションを「先物売り&現物買い戻し」により解消する機会が多くあったということです。
日本株は9月5日から、10月前半に調整した局面を除くと、ほぼ一貫して上昇していますが、上昇の最大の原動力は、「外人投資家の先物買い戻し→裁定業者の現物の買い戻し→外人投資家の先物買い戻し」という「買い戻し」だったと考えられます。裁定残以外でも、11月6日のコメントでご説明した「カラ売り比率」を見ても、相場のピークアウトの目安とされる40%を5営業日連続で下回っています。
もちろん「買い戻しがなくなる=下落が始まる」ではありませんが、何らかの悪材料などをきっかけに下落が始まった場合、これまでのように買戻しというクッションがなくなっており、下落が深くなりやすい状況であるという認識が必要です。