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2019年12月2日のマーケット・コメント

中国に関して-市場は楽観に触れすぎか

 

11月30日に発表された中国製造業PMI(購買担当者指数)は50.2と、7ヶ月ぶりに強弱の境目である50を回復しました。また米国では、11月29日のブラックフライデーのオンライン販売額が、過去最高だったと伝えられました。先週金曜日の米国株は小幅下落でしたが、週末のこれらの発表を受けて本日の日本株は上昇しています。ただ、制裁関税の悪影響は継続し、その他の経済指標が悪化が止まっていないことを考えると、中国の景況感の回復持続には大きな疑問を感じます。

 

「香港人権法」成立を受けて警戒される中国の報復措置ですが、強烈な言葉による抗議声明とは裏腹に、これまでのところ具体的な対抗策はほとんど報じられていません。唯一報道があったのは、同法案を起草した人物の中国、香港及びマカオへの入国禁止ですが、これではルビオ上院議員ただ一人が対象になるだけで、対抗措置と呼ぶにはあまりにも形骸的です。先週末に中国から対抗措置が打ち出されなかったことを受けて、本日の日本株は11月25日付けコメントでご説明した

「3.法案成立しても、貿易問題と人権問題は別の問題として、貿易問題では部分合意を目指し、人権問題では何らかの報復措置を表明する。」

というシナリオの確率が高まったことも上昇要因になっている可能性があります。

 

しかしながら「断固とした対抗措置を取る」と表明しておきながら、ルビオ上院議員ただ一人を入国禁止にするに留まり、習主席は笑顔でトランプ大統領との調印式を迎える、ということで中国国内から批判的な声は上がらないほど、習主席の権威は絶対的なものなのでしょうか?米国では「香港人権法」にトランプ大統領が署名して成立させておきながら、トランプ大統領は「部分合意」という政治成果も手に入れることになり、完全に米国ペースになります。

 

これまでの中国の外交政策を考えると、中国には「損して得取れ」という考え方はなく、常に直球勝負の外交オンチでした。中国は面子を犠牲にしてでも経済を優先することを決断した、と油断するべきではなく、何らかの対抗策が打ち出され、市場がリスクオフ反応をする、ということに備えるべきでしょう。