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2019年12月3日のマーケット・コメント(2)

予想EPS×適正PERで考えるTOPIXの水準感

 

「日本株はまだ割安」「直近の上昇で日本株の割安感はなくなったが割高ではない」などの意見を目にすることが多いので、久しぶりにTOPIXの水準感を「予想EPS×適正PER」という観点で考えます。本日の日経新聞の市況欄に記載されているPER(前期実績15.19倍、今期予想15.95倍)から逆算すると、TOPIXの前期実績EPSは112.9、今期予想107.5と算出されます。一方、市場コンセンサスの今期予想EPSは、ブルームバーグのデータによると119.0(PER14.3倍)です。

 

まず適正PERのレンジですが、アベノミクス以来、明らかな増益基調の時は16-18倍、平常時は14-16倍、明らかな減益基調の時は12-14倍となっていました。これは市場でも認知されており、市場コンセンサスEPSベースのPER14.3倍が、上記の「日本株はまだ割安」の論拠は「平常時レンジの14-16倍の下限近く」ということであり、「直近の上昇で日本株の割安感はなくなったが割高ではない」の論拠は「減益時レンジの12-14倍の上限をわずかに超えているだけ」ということです。

 

上記の日経新聞ベースの前期実績は単なる集計なので誰が計算しても答は同じだと思われます。そこで112.9を基準に今期の増減益率を計算すると、日経新聞ベース(基本的に「会社予想の集計」)では4.8%減益、市場コンセンサスベースでは5.4%増益となります。上期実績は7%程度の減益でしたので、市場コンセンサスを達成するためには下期の急回復が必要ですが、そのように予想できる兆し(受注動向など)はありません。したがって今期予想には日経新聞ベースの107.5を使うことが妥当だと判断されます。

 

107.5にPER12-14倍をかけると1,290-1,505となり、現在のNT倍率で日経平均に換算すると17,671-20,617円となります。もちろん何のきっかけもなくその水準に下落することはないですが、もし米中決裂などにより新たな下落波動が始まった場合、21,000円割れまで到達する論拠はある、ということを頭のどこかに留めておくべきでしょう。