米ISM製造業指数が示す景気底打ち感のなさ-日本株はまだもみ合いの範囲内の動き
昨日米国で発表された11月のISM製造業景況感指数は、事前予想の49.2を下回る48.1で、10月の48.3からわずかではありますが悪化しました。同指数は2018年8月の60.8をピークに悪化が続き、今年8月には49.1と50を下回り、9月には47.8に落ち込み米株市場の調整の原因になりました。その後も底ばいが続き、底打ち反転の兆しは見られません。米国を除くほとんどの地域で景気減速が継続している状況を踏まえると、この結果には違和感はなく、昨日のコメントで言及した11月の中国製造業PMIが50を回復したことに違和感があります。
昨日の米国株は久しぶりに大幅下落となり、ISM製造業景況感指数を嫌気した、とメディアでは解説されています。しかし米国長期国債も売られて(金利上昇して)おり、景況感悪化と整合的ではありません。つまり昨日の米国市場は、弱いISMで景況感悪化を織り込んだというよりも、弱いISMが株、長期国債ともに利食いのきっかけになった、と見るべきでしょう。
米国株の大幅下落を受けて、本日の日本株も下落していますが、完全に先物主導の動きで、景気敏感株が下落を主導してはいません。今日の下落は、更なる景況感悪化を織り込む新たな下落波動の始まりではなく、日経平均で23,000-23,500円のもみ合いの範囲内での調整と言えます。
「香港人権法」に対する、中国の新たな対抗措置として「米軍艦船の香港寄港禁止」「香港のデモに加担した米国の人権NGOに制裁(どのような制裁かは不明)」と報じられました。依然として「形骸的措置」の域を出ず、習主席はまだ「香港人権法」と「米中貿易協議部分合意」との両立を模索していることが伺えます。一方、ロス商務長官は「(3,000億ドルのうち残る1,400億ドルの中国製品に対する15%の関税発動が予定されている)12月15日までに米中合意がなされなければ、トランプ大統領は予定通り関税発動する」と発言しています。「協議進行中」を理由に発動が延期されることはない、ということです。
さすがに12月15日までに米中両首脳が調印式を行なうとは、場所の選定やスケジュール調整にかかる時間を考えると現実的ではないので、習主席としては1.12月15日までに合意内容を固め、後日調印式に臨む、2.「部分合意」の獲得はあきらめ「香港人権法」に対する本格的対抗措置を表明する、のどちらを選択するか、遅くとも来週中の決断を迫られている状況です。市場の織り込みは、1.をメインシナリオとするものの実現に向けてやや不安、というものだと思われますので、想定される市場反応は、1.となったら当初はややポジティブだがいずれ出尽くしに、2.となったらネガティブ・サプライズ、だと思われます。2.となった場合は、新たな下落波動が始まる可能性が高いでしょう。