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2019年12月30日のマーケット・コメント

現在の市場コンセンサスと年明けに予想される懸念材料

 

日経平均は8月に20,000円台でもみ合った後、9月初めに21,000円を超えてから上昇基調が続き、10月前半に押し目を作ったものの、それ以降は押し目らしい押し目なく今月半ばには24,000円台回復を果たし、その後は23,000円台後半でのもみ合いで年を終えようとしています。この背景にある市場コンセンサスは、主に以下の2点でしょう。

1.景気敏感業種の企業業績は、2019年度は2桁に迫る減益だが、四半期ごとに見た業績のボトムは4-6月期ないしは7-9月期で、今下期以降は業績回復基調となり、2020年度は2桁増益となる。

2.12月12日に担当者レベルで合意に達した米中第1段階貿易合意は、来年1月にも署名され、発効する。

そこで、年明けにそれらのコンセンサスが実現しないリスクを考えたいと思います。

 

まず企業業績に関してですが、日系大手証券会社の製造業の企業業績予想(経常利益)を見ると、野村證券は2019年度9.1%減益2020年度16.1%増益、大和証券は2019年度9.7%減益2020年度11.3%増益、SMBC日興証券は2019年度4.9%減益2020年度10.3%増益となっていますので、各社とも2019年度は減益だが2020年度は二桁を超える大幅回復となっています。2020年度業績大幅回復の根拠は、設備投資サイクルの底打ち反転と米中貿易緊張緩和だと思われます。

 

中国の主要経済統計は、鉱工業生産、工業企業利益などは11月は10月よりも持ち直していますが、豚肉高騰(前年比2倍)の影響で11月の消費者物価指数(CPI)は4.5%と10月の3.8%から大幅悪化、11月の生産者物価指数(PPI)は-1.4%と10月の-1.6%に続き低迷しており、2020年度に向けて展望は明るいとは言い難い状況です。また中国社債市場でのデフォルトは、2017年には300億元(4,600億円)に満たない水準でしたが、2018年には1,219億元(1兆8,700億円)に激増し、2019年は1,300億元(2兆円)を超えました。

 

来年1月後半から2月前半に10-12月期の業績が発表されますが、7-9月期に比べて明確な回復感が出る要素は見当たらず、それが7-9月期と同様の水準であれば、2020年度の業績大幅回復の説得力は失われるでしょう。

 

次に米中第1段階貿易合意の署名・発効ですが、米国側が情報公開にも署名にも非常に前向きであるのに対し、中国側は合意の内容に関しても署名の日程に関しても、具体的な発表は何一つしていません。昨日中国の駐米大使が以下の様に発言しています。「中国は米中第1段階貿易合意を履行するが、米国は『一つの中国』政策を尊重すべきだ。」「われわれは交渉担当者に全幅の信頼を置いている。最も、米中両交渉チームともそれぞれの首脳の指揮下にある。」

 

この発言の意図を素直に解釈すれば「いかに両交渉チームが交渉をまとめても、米国が香港やウィグルでの人権問題を取り上げるのであれば、習主席は署名できない。」ということでしょう。やはり中国側は署名日程をなかなか決めずに、トランプ大統領を焦らせる作戦のようです。しかし香港人権法はすでに成立しており、ウィグル人権法案もほぼ全会一致で可決の見込みで、トランプ大統領がどうにかできる状況ではありません。トランプ大統領の焦りは中国への怒りに向くしかなく、追加制裁関税の復活も十分可能性があるでしょう。

 

以上あわせて考えると、製造業の2020年度業績は、大幅回復どころかさらなる減益になる可能性があり、来年初の日経ヴェリタスに掲載される私の市場予想はそれが根拠です。

 

今年もお世話になりました。みなさま、良いお年をお迎えください。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。