「ウィグル人権法案」下院通過
昨日、米下院で「ウィグル人権法案」が賛成407、反対1、棄権13の圧倒的多数で可決されました。同法案は先日成立した「香港人権法」のウィグル版といえる内容で、ウィグルの少数イスラム教徒に対する人権侵害があった場合、中国に制裁を課す、という内容で、下院通過を受けて中国政府は更なる対抗措置を取ることを表明しました。ただ具体策には触れていません。
「ウィグル人権法案」はすでに9月11日に全会一致で上院を通過しており、今回下院を通過したものはそれに修正を加えた法案です。今後の手続きとしては、1.上院が下院案をそのまま可決する、2.上下院で法案の刷り合わせを行い修正案を作成し、修正案を上院下院それぞれで可決する、かのいずれかを経て、大統領に送付、大統領が署名するか、10日以内に拒否権を発動しないかで法案成立となります。「香港人権法」の例を踏まえると、上院が下院案をそのまま可決して、大統領が署名して法案成立となりそうです。
これで中国は更に困った状況になりました。「香港人権法」に続き「ウィグル人権法」も成立確実となり、内政干渉的法案成立に対しては断固とした講義をする必要がある一方で、日米貿易交渉を頓挫させるような報復措置は取れないためです。中国はこれまでのところ、特定の人物に対する入国ビザ発給禁止や米軍艦船の香港寄港禁止など、影響が極めて限定的な形骸的措置しか報じられておらず、習主席が「部分合意獲得」をあきらめていないことが伺えます。
今後のシナリオとしては以下が考えられます。(市場にとってポジティブな順)
1.昨日のロス商務長官の「12月15日までに米中合意がなされなければ、トランプ大統領は予定通り関税発動する」という発言を覆し、土壇場でトランプ大統領が「協議進行中」を理由に関税発動を1-2ヶ月延期する。
2.12月15日に関税発動された後も米中協議を続け、おそらく年明けとなる合意成立と引き換えに12月15日から発動された制裁関税は撤廃される。(その場合は、関税発動後も中国は本格的対抗措置を取らないことが条件)
3.習主席は「部分合意獲得」よりも、内政干渉的法案に対する対抗措置を講じないことが「弱腰外交」と政権批判に向かうリスクを回避することを優先せざるを得なくなり、本格的対抗措置を打ち出し、貿易交渉は事実上決裂する。(これは12月15日の前でも後でも。いつでも起こり得ます)