米国長期金利大幅低下でもドル円は底堅い-110円台前半からは買い下がり
昨日、米国で先週金曜日に続き再び世界的景況感悪化が注目され、米国株下落、米国債券上昇(金利低下)となりました。米国10年国債利回りは2.37%まで低下し、今年の最低水準を更新しました。2.37%の内訳は、BEI率(期待インフレ率)が1.83%、10年物価連動国債利回り(実質金利)が0.54%となっています。3月20日のFOMCを受けて、実質金利の縮小が主要因で米国10年国債利回りは低下しましたが、先週金曜日以降はBEI率低下が利回り低下の主要因となっており、2.50%を下回る利回り低下は、金融政策のハト派化を反映したものではなく、期待インフレ率の低下、すなわち景況感の悪化が主要因だったということです。
そのような米国債券市場の動きに比べると、世界的に株式市場の動きはかなり楽観的と言えます。4月半ば以降に発表されてくる1-3月期企業業績と4月以降の業績見通しを見極めたい、ということが背景にあると思われますが、需給的に4月前半に下落リスクがあります。以前も何度かご説明しましたが、年金などの中長期投資家は資産配分の見直しを四半期ごとに行ないます。景況感の悪化が進む中、1-3月期は世界的に株が戻ったことを受けて、4-6月期の資産配分変更を株式削減での対応を行なってくる可能性が少なくないでしょう。
この動きは2016年4月にも見られました。2016年は1月2月に株が大幅下落した後、3月は株の戻りがありました。4月に入ると月前半に再び大幅下落となり、この背景は明らかに中長期投資家の資産配分の変更でした。2016年は安値をつけたのが2月半ばで、カラ売りが整理され切るまでの十分な時間が無かったことに加え、4月終わりの日銀追加緩和観測もあり、4月後半は反発の動きとなりました。しかし今回は、安値をつけた昨年12月終わりから既に3ヶ月が経過し、カラ売りは完全に整理されていると想定され、また日銀の追加緩和観測などという特殊な思惑もありません。
つまり、4月は月前半に資産配分変更に伴う需給要因で下落し、月後半は企業業績に対する見方の悪化により更に下落する、というシナリオへの警戒が必要だということです。4月終わりから5月にかけて、日本では10連休という、短期ポジション縮小に繋がる史上経験のない特殊要因もあります。景気敏感業種を中心に、日本株に対する弱気スタンスを強調します。
ドル円ですが、米国長期金利が大幅に低下しているにもかかわらず、今週は比較的堅調な動きとなっています。FOMCを受けて一旦110円を割れたものの、109円台の滞留時間は2日間でした。やはり、更なる拡大の見通しはなくなったとは言え、2.5%という日米金利差は、キャリー(保有することによる損益)が2.5%の「貰い」になる、ドルの押し目買い(円の吹き値売り)を、キャリーが2.5%の「払い(逆日歩と同じ)」になる、ドルの順張り売り(円の順張り買い)よりも優勢にさせる、ということなのでしょう。しばらくは、大きく円安ドル高になることにより大きな値上がり益を狙える状況にはなりそうもないですが、110円水準からの円高ドル安進行余地は限定的であることと、キャリーが貰いであることから、110円台前半からは買い下がりスタンスで臨むべきと考えます。
補足ですが、2.5%のキャリーのインパクトが決して小さなものではないということをご説明します。F/Xの最大レバレッジは25倍ですから、例えば10万ドルの買いポジションの必要証拠金は100,000÷25=4,000ドルです。キャリーは10万ドルに対して発生しますので、100,000×2.5%=2,500ドル(年換算)となり、使用資金に対する利回りは2,500÷4,000=62.5%(年率)となります。25倍が極端だとして5倍としても、2,500÷20,000=12.5%(年率)となります。F/Xでドルロングを保有することによるキャリーのインパクトと、これが「貰い」になるか「払い」になるかでは、極めて大きな違いであることがわかります。