トルコ・リラの乱高下で再び脆弱通貨下落が始まるか
トルコ・リラが乱高下しています。きっかけはFOMCを受けて、世界的に景況感の悪化懸念が再燃した3月22日に、過去約半年小康状態だったトルコ・リラは一時7%の急落となりました。3月31日に地方選挙を控え、リラ下落防衛になりふり構わずだったエルドアン政権は、リラのカラ売りを阻止するためオフショア市場に対してリラの流動性供給を停止する措置を取り、リラ不足から27日にはスワップレートは一時年率1200%に達しました。スワップ市場でリラ調達が出来なくなったため、リラ建て資産、つまりトルコ株とトルコ債券を売却してリラを調達するしかなくなり、27日にはトルコ株、トルコ債券ともに大幅下落となりました。28日にはリラは再び5%の大幅下落となりました。
このトルコ・リラの乱高下により、ブラジル・レアルやアルゼンチン・ペソなどの他の脆弱通貨も再び下落を始めています。そもそも、昨年夏に脆弱通貨が大幅下落して以来、経常収支赤字&高い対外債務比率、という基本的問題はなんら解決されていません。トルコでは経常赤字は縮小していますが、これは単に海外から資金調達が困難になったからであり、本質的には状況は悪化しています。過去半年小康状態だったこともあり、脆弱通貨の問題に市場から再び注目されやすい状況だと言えます。
トルコで3月31日の選挙が終わったあと、オフショア市場へのリラ供給を再開したら、リラの大幅下落のリスクが生じる一方、供給停止を続けたら株と債券の大幅下落が継続するリスクが生じます。結局、どちらを選択しても、通貨安と株安・債券安のどちらが先になるかの違いでしかなく、早晩トリプル安(通貨安、株安、債券安)に陥るのはほぼ確実です。
トルコの状況が他の脆弱通貨に波及した場合、世界的な景況感の悪化が主要な懸念となっている現在の市場に、強烈なリスク・オフの反応を引き起こす可能性は高いでしょう。真の避難先は米ドル資産だけであることに、市場が気づくのにそう時間はかからないと感じています。(円資産は真の避難先ではない、ということです。)しばらくは大幅な円安進行は想定できませんが、景気敏感業種主導で日本株が大幅に下落することは、いつ始まってもおかしくないでしょう。