世界的に景気減速に再注目
昨日のECB会合では、EU域内の今年の経済見通しを大幅に下方修正したうえで「現在のゼロ金利政策を年末まで継続する」と、従来の「年半ばまで」から変更され、今年中の利上げはないことが示されました。それを受けて昨日の米国株式は、景況感悪化懸念から景気敏感業種主導で下落しました。米国債券は上昇し、米国10年国債利回りは2.69%から2.64%に低下しました。
昨晩の欧米市場の動きを受けて、日本株も下落で始まりました。更に、前場中に発表された中国の2月の貿易統計で、輸入輸出ともに予想以上に減少したことが示されると、下落が加速し日経平均は一時21,000円を割り込みました。下落を主導したのは昨日と同様に、中国関連銘柄と半導体関連銘柄を中心とする景気敏感業種でした。市場は、これまで織り込んでいた「1-3月期か遅くとも4-6月期が業績モメンタムのボトム」というシナリオが、「単なる希望的観測」に過ぎないかもしれない、ということを織り込み始めたと思われます。
昨日発行された某日系大手証券の2019年度業績予想レポートでは、日経平均の2019年度予想経常利益は2%増益とされていました。実際には、少なくとも2桁の減益、場合によっては20%を越える減益となることが想定され、市場の来期業績目線の下方修正余地は大きそうです。当然、その分株価は下落しますので、株価の下落余地も大きいということです。ただ、来期業績見通しの変化は、ある程度時間がかかりますので、昨年12月のように一気に大幅に下落する相場よりは、昨年で言えば4-6月のように、指数がレンジ内での動きを続ける中で、業績懸念がある銘柄群が静かに下落トレンドをたどる相場となる可能性が高いと考えます。
米国株は、昨年11月と12月の戻り高値水準(ダウで言うと26,000近辺、S&Pで言うと2,800近辺)で上昇は頭打ちとなり、緩やかに調整してきており、世界的な株価調整を先行しています。しかし、昨年12月とは違い、利上げ停止で米国経済が世界経済に先行して悪化する懸念は無くなり、世界経済の減速は中国やその他の新興国、欧州などの減速が原因となる姿が現在では明らかになったため、米国株は世界景気に最も鈍感であるという本来の動きをすると思われます。つまり、下落局面では米国株の下落率が最もマイルドになり、その他各国の株式市場の下落率は景気敏感性(景気敏感業種が全体に対して占める比率)によると考えられます。日本株は景気敏感性が高いため、下落率は相対的に大きくなるでしょう。
中国の弱い貿易統計を受けて、ドル円も急速に調整し、一時111円を割り込みました。しかし以前からご説明している通り、日米金利差が円高進行のブレーキとなり続けるため、110円台前半からは買い始めるべきでしょう。(3月6日付コメント参照)